今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2010年3月20日土曜日

『第1回山頭火俳句ポスト賞』決定

投句期間:平成21年11月29日~22年2月28日

昨年21年11月29日設置された一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された137句(内、県外の人の句は10句)から、各選者の先生に選んでいただきました。4月29日「俳句一草庵」開催日に表彰。

山頭火俳句ポスト賞(冬季)
 山頭火の眼鏡まんまる冬ぬくし        松山 小原恵美子

(評)山頭火の風貌の第一の特徴がセルロイド縁の真ん丸い眼鏡である。
度の強い眼鏡の奥の本当の目が何を見つめていたのか。  カモフラージュしていた眼鏡でもある。ちょっと見には、とぼけても見える山頭火を冬の陽光と作者が暖かく包んでいる。(熊野) 

小西昭夫・選
【特選】 木枯らし吹いて山は寄せ鍋      松山 木城香代

(評)外は木枯らしが吹いて寒い。山では寄せ鍋を食べて暖をとる。この句、自分が山で寄せ鍋を食べているとも、自分は街にいて山の人々の食事を想像しているとも読める。だとすると、山は父母の住む作者のふるさとかもしれない。この句から伝わってくる暖かさを思えば後者の読みが魅力だ。

【入選】 返り花一草庵の猫日和        松山 高橋佐和子

(評)返り花の咲く小春日和の一草庵。縁側では猫が日向ぼこをしているのだろうか。
猫日和がお見事。

白石司子・選
【特選】 山頭火の眼鏡まんまる冬ぬくし    松山 小原恵美子

(評)山頭火の眼鏡に着目したところが発見。季語の取り合わせもうまい。
一句全体からは、山頭火に対する作者のあたたかいまなざしみたいなものを感じる。

【入選】 柿落ちて空へさえぎるものなし一草庵 新居浜 永井由紀子

(評)写生句のようであるが、一草庵に来た作者の心の中までもが澄んでいるような
思いを一句全体から感じる。私にとっても一草庵とは、そういう場所である。
ただ「空」がなくても意味は通じるかも知れないしリズムもよくなる、そこが特選との差。

高橋正治・選
【特選】 蟷螂のみどり冷たき墓標かな     松山 谷 明子

(評)墓標に一点に佇ち止る。かまきりが人様に何も言える筈もないことは承知である。
かまきりはそこに満足して動かない、終極と浄土を心に描く。

【入選】 傾く石に傾いて坐し冷ゆる         松山 伊藤海子

(評)栄枯浮沈を静かに見つめる平常心こそは自然の本領である。
傾いた石に坐り自分の不完全を思う。

熊野伸二・選
【特選】 裸木いっぽん愚を貫きし山頭火    伊予 和中つた
(評)葉を落し尽して立つ一本の落葉樹。侘しくも見えるが凛乎たる姿である。
それは「私の道は、私の愚をつらぬくより外にはない」「愚に帰れ、そしてその愚を守れ」と、
わが道を歩いた山頭火に通じる。
【入選】 数へ日や夜の雨聴くへんろ宿      東京都町田 佛渕雀羅
(評)「今年もあと幾日」という年の瀬の夜を、へんろ宿で迎える境遇。
しかも冷たい雨が降っている。行乞流転した山頭火も、何度そんな夜を過ごしたか知れない。
悲観とも達観とも読める句。

本郷和子・選
【特選】 傾く石に傾いて坐し冷ゆる       松山 伊藤海子

(評)人間の孤独感、寂寥感のようなものを感じる。山頭火が川の岸辺の岩の上で
坐っている写真を思い出した。

【入選】 山頭火の眼鏡まんまる冬ぬくし    松山 小原恵美子

(評)季語の斡旋が的確。「眼鏡まんまる」に明るさ優しさ、ユーモアさえ表現できている。