昭和九年、其中庵という安住の地を得て、心穏やかな日を過ごせるようになった山頭火。この句は己自身の投影か、迷いも少しずつほぐれてきたのか。(ちとせ)
一草庵広場に3月から「今月の山頭火句」を飾っています。
山頭火顕彰の第一人者・大山澄太先生の薫陶を受けた俳人であり書家である梅岡ちとせ先生が、色紙に「山頭火の句」を、短冊に解説を書いてくれました。
俳画もよくし、わさびの絵を添えてくれました。
わさびが望む五月の空も、澄み切っているようです。 そして、今ではこの風景が一草庵に無くてはならないものとなりました。
(英訳 Into the sky,A young bamboo -Without pain. グリーン・ジュイムズ)
この句は、「草木塔」の雑草風景に収録、昭和10年5月1日の作。
高遠武馬氏(南蛮寺萬造、山頭火全集編者、法政大学教授)は、次のように解説していています。
「5月の空、どこかに五月幟のはためく音さへきこえてきそうな爽やかな空へむかって、
すくすくと今年竹が延び上ってゆく。それは、この世のけがれを知らぬ清浄無垢の象徴である。
この身のいやらしさに比べてなんと清らかな姿であろう。あゝ、この若さがほしい、この力を我に
与えたまえ-そういう山頭火の祈りの声がきこえるような句である。
其中庵の裏側は竹藪になっていた。」
一草庵の裏も、昔のままの姿で、やぶ椿の大木と竹林が残っています。
こんな山頭火の句を見つけました。
お寺の竹の子竹になつた
若葉清水に柄杓そへてある
青葉若葉のひとりです
車窓(マド)から、妹の家は若葉してゐる
柿の若葉が見えるところで寝ころぶ