今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2011年11月14日月曜日

一草庵「今月の山頭火句」(11月)

酔うてこほろぎと寝てゐたよ

行乞や知人から得たお金があれば、又、お酒に浸る。泥酔から覚めれば悔恨の念にかられる。
この繰り返しに、人間山頭火を見る事が出来る。
これが人の業の深さというものであろうか。(ちとせ)

昭和五年十月九日の日記に出てくる。宮崎県日南での作。
七日の日記には、「酔中野宿」と前書きして、「酔うてこほろぎといつしよに寝てゐたよ」と詠んでいる。
説明的すぎるので、「いつしよに」を削除している。
昭和六年一月号の「層雲」に発表された句。
澄太さんはいう、「修証義」を唱えていると、静かにお経をきいていたお婆さんが重そうな壺をかかえて、「あんたこれ好きか。」という。藷焼酎がぷんと匂う。
「うん」とうなずいて、鉄鉢を捧げた。なみなみと一杯になるまで受けて、その場でぐいぐいやった。
その先からさっぱりわからなくなった。耳元でこおろぎがしきりに泣くので目が醒めた。
夜空には星がまたたいていた。日記にはこんな句も綴られている。
      酔ひざめの星がまたゝいてゐる
      どなたかかけてくださつた筵あたゝかし
山頭火の句には、こほろぎに鳴かれたり、とんぼがとまったり、鴉、蝶々、みのむし、ふくろう、とかげ、
そして、さびしい道を蛇によこぎられる様子などが友達のように詠まれている。
どこかユーモラスで、その行き先に大きな世界を感じさせてくれる。

<参考>
 昭和5年の時代背景。
 昭和4年10月24日、ニューヨーク・ウォール街で株が大暴落、世界大恐慌が起こり、失業者が全世界5000万人に

 及んだという。昭和5年、小津安二郎の映画「大学は出たけれど」が大ヒットする。
 そして、昭和6年に満州事変が勃発。
 何故か、今の世界、今の日本によく似ていますね。

山頭火句の英訳を紹介しておきます。

   Oh, I slept、
   In drunkeness,
    With  this  cricket.            ジェイムズ・グリ-ン