『山頭火出前俳句ポスト・ジュニア賞』決定。(平成23年8月7日)
一草庵周辺の清水小学校、湯築小学校、姫山小学校へ、古新聞で作った「山頭火俳句ポスト」を
持参。短い期間でしたが、635句が児童より投句されました。その中より、選者の先生に、特選1句と入選3句を選んでいただき、「一草庵夏の子どもまつり」の会場で表彰させていただきました。
遠き昔の忘れてしまっていた、初々しい新鮮な心が、句の中にプンプンと匂っています。
小西昭夫・選
【特選】あめがふりおおきなおんがくはじまるよ 湯築小3年 千住海翔
(評)あめがふると、地上にあるいろんなものにあめがあたって音をたてる。やねにあたる音、木々や草花にあたる音、土にあたる音、その他いろいろなものにあたって、色々な音をたてる。それを「おおきなおんがく」ととらえる感性がすばらしい。
【入選】手の中のホタルがぼくの道案内 湯築小6年 伊藤 陸
(評)つかまえたホタルを手でかこう。手の中でホタルはてんめつしている。ひかったり暗くなったり。それはまるで「ぼくの道案内」をしてくれているようである。
【入選】たねまいたきゅうりの本葉もう二まい 姫山小4年 菅 真珠
(評)きゅうりの観察をしているのだろうか。双葉が芽をだしたとおもったら、もう本葉が2枚も出ている。生命の不思議。
【入選】にいちゃんがさきさきのぼるなつのやま 清水小1年 葛原 舞
(評)さすが、にいちゃん。にいちゃんはなつやまをおとうとよりもさきさきにのぼるのだ。それは、おとうとに負けたくないこともあるのだろうが、にいちゃんはおとうとをまもっているのだ。
白石司子・選
【特選】手の中のホタルがぼくの道案内 湯築小6年 伊藤 陸
(評)何が起こるか予測のつかない、まさに暗闇ともいえるこの世界。しかし、「ぼく」の「手の中」には、神秘的な光を放ち、「道案内」をしてくれる「ホタル」がいる。てのひらの中にやさしく包み込み、発光する蛍は、人間そのものでもあり、「生」に対する愛しさみたいなものさえも感じさせる。未来はきっと明るいはずである。
【入選】こどものひ にくときゃべつとういんなー 清水小1年 藤田恵輝
(評)単なる言葉の羅列のようであるが、「こどものひ」という季語に、食べ物を取り合わせたところが新鮮。一句全体からは「食」に対する感謝の気持ちも感じ取られるし、「にく」も「きゃべつ」も「ういんなー」も全てが平仮名表記であることも、同じ力関係で食卓を賑わせているようで楽しそう!きっと子どもの日の君たちを元気にしてくれるよ。
【入選】ぼくたちといっしょにのびる ひまわりくん 姫山小3年 金田俊介
(評)夏の日ざしをあびて、ぐんぐん成長するひまわり。それを「ぼくたちといっしょに」としたところに、作者の人間的やさしさが感じられる。また、「ひまわり」ではなく、「ひまわりくん」としたところも、仲のいい友達のようで楽しい。ぼくたち、そしてひまわりくんは、夏休み中にどこまで伸びるかな?
【入選】理科室にとんぼがじゅぎょうしにきてる 湯築小5年 濱家優萌
(評) もしかしたら、「じゅぎょう」中に「とんぼ」が迷い込んできたのかもしれない。この句の良さは、その場所が教室ではなく、「理科室」としたところ。大きな眼をますます大きくさせながら、作者と共に実験でもしている姿が想像されて愉快。
高橋正治・選
【特選】アイスクリームつぎつぎたべるといたいんだ 姫山小2年 麓 武士
(評) ほんとうだね。いそいでたべると頭がズキズキするね。でもアイスクリームはおいしいよね。
【入選】父さんのかたもみふえるつゆの日は 姫山小4年 天倉祐志
(評) 父さんの背中は大きくて温かいだろ、すてきなすてきな父さんは家族を守ってくれる。
【入選】トマトのはっぱがふえました 湯築小2年 天野美咲
(評) どんどんはっぱがふえていくね。太陽をいっぱいすいこんで、きっとりっぱなトマトができるよ。
【入選】母の日にはじめてお花あげました 清水小3年 杉本優斗
(評) フフッ母さんこれどうぞ。母の日のプレゼントはとても嬉しかっただろうね。抱きしめたいくらい。こんどは父さん母さんと手をつないでごらん楽しいよ。
本郷和子・選
【特選】春の朝今日から妹一年生 清水小3年 大西瑛莉花
(評) 入学式の朝、かわいい妹が一年生になって、心から嬉しい気持ちがでている。「今日」からという言葉で、待ちに待った日ということがよくわかる。
【入選】桜の木みんなに見られて花ちらす 清水小5年 安永朋香
(評) 花びらの散る様子を「みんなに見られて」と桜の木の側に立って見たところが、新鮮でおもしろい。
【入選】クワガタといっしょにそらとぶゆめみたよ 姫山小4年 市川怜央
(評) クワガタと空とぶ夢、さぞ楽しかったでしょう。思わず、その夢のこと聞いてみたい気がする句。
【入選】かぶとむし大きくなったらそらとぼう 湯築小2年 長野祐亮
(評) 羽根を広げて、空をとぶ鳥のように想像したところがすばらしい。
熊野伸二・選
【特選】めかくしでわろうよわろうスイカわり 姫山小4年 佐名木唯
(評) 海水欲などでのスイカわりは、子どもがもっともよろこぶイベントのひとつ。「わろうよわろう」というくり返しに、早くやりたいという子どもの期待感がよく表現されており、情景が目に浮かぶ。リズムがぴかいち。
【入選】前がみの長さ気になる初夏の風 清水小6年 光石 和
(評)初夏の風に、少し長めの前髪が吹かれて眼にかぶさったりするのか。それとも、おしゃれにも気をつかう年ごろになって、髪の長短にも細かい希望があるのだろうか。初夏の風を受けてこそ気がついた乙女心。
【入選】なつのうみ うきわにのってるイルカだよ 姫山小2年 永田和子
(評)海水浴で浮き輪にのっている子どもが、両手で水をかいて得意がお。イルカのようにはおかないが、気持ちはイルカなみ。やがて、イルカのようにスイスイ泳げる日が来るでしょう。
【入選】とんぼの目赤青きいろしんごうだ 湯築小2年 土居大河
(評)トンボは住んでいる場所や季節によって、たくさんの種類がいる。しかも、飛びながらカやハエなどの害虫を食べるため、とびきり大きな目をしている。そのトンボをよく観察して、赤・青・黄の目の色に気がつき、同じ赤・青・黄の交通信号のようだと思った句。町の子らしい連想。
【佳作】土を出て短い一生歌うセミ 湯築小6年 木多拓海
(評)夏になると、土をはい出したセミのさなぎが、草や木を登って羽化する。それまで何年もかかるといわれる。セミのさなぎが、一週間ていどしか生きていない。そんなセミのことを知って「短い一生」をいっしょうかんめい生きているあかしとして鳴き続けるセミにいとしさを感じている句。
【佳作】トンボさん私のぼうしにとまっている 湯築小5年 蓮井美月
(評) “トンボさん、私の帽子にとまってくれてありがとう、もう少しそのままでいてね”
とトンボに話しかけている声がきこえてくる。そんなかわいい風景だから、この帽子はむぎわら帽子でなく、宮崎駿アニメの少女のかぶっている帽子を想像する。山頭火に「笠へとんぼとまらせてあるく」という句がある。自分の笠にとまっているトンボを写生し、自分の心の中で解釈して、“とまらせてあるく”と表現している。
【佳作】ホタルがり金の雨(あま)つぶぱらぱらと 清水小3年 祝 しずく
(評) ホタルがたくさんとんでいるところが金の雨つぶのように見えたのか、それとも、雨がぱらぱら降ってきて、ホタルの光で金色になったのか、どちらでもよいが、発見は見事だ。
【佳作】太陽が山のいただき夏のルビー 姫山小4年 岡本海槻
(評) 山の空を彩る太陽を「夏のルビー」の表現したところが素晴らしい。
しあわせ色に赤く輝いているだけでなく、世界一になった「なでしこジャパン」ようなさっぱりとしたパワーと若さを感じました。ルビー・サマーを楽しんでください。