今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2012年6月10日日曜日

一草庵俳句日記<螢を観賞、そして句会>

松山市のご配慮で、一草庵の夜間公開日が誕生しました。
   6月2日(土)
  12月2日(土)
  2月17日(土)です。
この日6月2日に、「山頭火 ほろほろ句会 螢の巻」を開催しました。
その報告と感想です。

ほう ほう ほたる こい
あっちのみずは にがいぞ
こっちのみずは あまいぞ
ほう ほう ほたる こい

螢は、平安時代から飛んでるそうですね。
「枕草子」にも登場します。
夏は、夜がよい。満月の時期はなおさらだ。闇夜もなおよい。蛍が多く飛びかっているのがよい。一方、ただひとつふたつなどと、かすかに光ながら蛍が飛んでいくのも面白い。…

だけれども、私には映画「螢川」(宮本輝の芥川賞作品の映画化)のラスト・シーンが忘れられません。昭和30年代の富山が舞台。天空へ舞い上がる螢、画面を埋め尽くす数百万の螢が乱舞するファンタジーの世界が…。

一草庵前の大川にもホタルが飛ぶようになったのですが、人間の作った灯り=車のライトで蛍も夢も逃げてしまいそうなので、長建寺の螢を皆で見に行くことにしました。
そこは、街中で身近に蛍の見える穴場でした。
 お墓の片隅で、声も出さず見を焦がして、恋する蛍を見ることができました。
一草庵に帰って句会が始まりました。
(一草庵には、ホタル愛好会のIさんが、30匹以上のホタルを籠に入れて持って来てくれていました。)
ぞろぞろと句会参加者、一草庵へ
参加メンバーは、大学俳句部の人、突如参加の若いカップル、新聞記者ご夫妻、女子アナも俳句を作りに来てくれました、最年長者は83歳の山頭火好きの長老、あわせて20名。
句会は、「松山はいく」のメンバーが進行してくれるのです。
初めて俳句を作る人、俳句歴30年のベテランもいて、どうなるだろうと心配する人もいたけれど、
自由で楽しい、愉快な充実した句会となりました。その模様を写真で。

句作風景、2~3句投句

いつの間にか和やかな雰囲気に!

テレビ局も取材に!

 投句数は42句。各自は特選2句を含む5句を選句します。
 実景を、ホタルによって詠まされたのでしょうか、
 実感のこもった句が発表されました。
 目でみて、肌にふれて、耳でききとめ、匂いも感じて。
 目の不自由なヘレンケラーのような、それを感じさせない俳句の上手な人の参加もありましたよ。
  追記、やっと連絡がとれましたので、当日一番人気のあった俳句を紹介しておきます。
      盲目の俳人と言えば叱られるでしょうが、目の不自由な方が詠まれた句です。

      蛍とぶ会場風景が見事に詠まれています。
       流螢のみだれて散るや傾(かし)ぐ墓碑   みどりの手

     もうひとつの句も素晴らしい句でした。
       五年目の人と歩くや川螢           みどりの手

 一部ですが、紹介してみます。
    掌に捕りて放ち惜しみぬ初螢    熊五郎
   はぐれたら我が庵に来よ恋螢    熊五郎
   迷うならこここいほたる我にこい   松五郎
   山頭火螢をつなぐ人の縁       己
   休日のデート帰りの螢飛ぶ      しずか
   螢待つ女にやさしさもどるとき    美世
   待ちわびた僕と螢の初対面      わかみどり
   上向いて螢の細く散りにけり     游士
   風抜けてふうっとホタル深呼吸    かえる
   ほうたる掌にいただくその光     迷月
   光の糸に結ばれてほうたるも人も  迷月

       「 山頭火螢をつなぐ人の縁」、新人の句でしたが、俳歴30年のベテランが選んでくれました。 
   もっといい句ありますが、省略しています。

  今回が、2回目の句会参加となりました。
  山頭火の俳句しかよく知りませんので、本当のことはよくわかりません。
  山頭火は、「俳句は象徴詩だ」といっていますので、
  象徴としての「螢」って、何んだろうと考えたりしました。
  儚いもの、貴重な存在、懐かしき郷愁の匂い、小さな夢物語、別世界etc。
  
荻原井泉水は、「俳句は自然・自己・自由の三位一体の境地なり」。
俳句で言う季語にとらわれず「自然」を対象として詠い、
客観写生でなく「自己」の表現を。
五・七・五にとらわれず、「自由」なリズムを大事に、と言っているので、

現実に目の前に飛ぶ、リアリティーある自然の中の夜の螢を詠んで、その中に自己を表現したいと思ったりはしたのですが、なかなか難しいです。

「俳句は滑稽なり、俳句は挨拶なり、俳句は即興なり」と言われていますが、滑稽句でない、挨拶句でない、即興句でない、俳句に命をかけた山頭火のような深い句を作りたいと思ったりする今日この頃です。

山頭火案内人が、ロウソクの灯りでお迎えしました。
夜のどばりに灯りがともる一草庵、庭にはローソクの火が流れ漂い、本当に素敵な句会会場、俳句パワーが生まれます。山頭火につながれて、蛍につながれて、集った19歳から83歳の俳句仲間の胸にも、ほろほろと夢の灯りがともりました。