今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2014年4月21日月曜日

『第13回山頭火俳句ポスト賞』の発表です。

 『第13回山頭火俳句ポスト賞』を発表します。

おめでとうございます。
(投句期間 25年11月1日~26年2月28日)       
                                        
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は121句。
(内、県外句の数17句、英語俳句2句)
東京、川崎、神奈川、横浜、京都、大坂、山口防府、フィリッピンなどの
全国各地からの投句の中より、各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。

表彰式は、4月29日(火・祝)に一草庵で行います。

 

             
  山頭火俳句ポスト賞               


 飛行機雲捕へし寒の潦   松山市 西野周次

(評)潦(にわたずみ)は、水たまりのこと。そこへ空に描く飛行機雲の白い一本の線が映ったのである。季節は寒であるから、冬の空の空気も澄んで、飛行機雲の白い線が、水たまりにくっきりと見えたのであろう。それを「捕へし」と詠み、寒の空、寒の水たまりの冷気と鋭さがうまく表現されている。(本郷評)


 山頭火一浴一杯賞

The warmth  embrance  of  red  kimono
makes  my  winter  glow and grow   ボリヴェール・チャリーナ(フィリッピン)

     (意味:赤い着物に包まれて冬暖かし)

(評)国際交流で訪れた外国の女性が、着物に袖を通して、その暖かさに安堵感と
満足感を味わっているのが詠まれている。
「赤い着物」の表現を見ると、彼女は和服が持つ絵柄や意匠性などよりも、「赤」の色が印象的だったのだろう。着物にも、日本文化の歴史や伝統の集積があることを理解してほしいものだ。(熊野評)


 小西昭夫選

【特選】
なの花に元気をもらって山のぼる  松山市 小濱宗太朗(8歳)

 (評)菜の花が咲いている。その菜の花に元気をもらって登る山なので、
 高い山ではないだろう。それでも、山を登ってゆく弾み心が伝わってきて気持ちがいい。


【入選】
冬至湯に隣りいれずみ男なり      神奈川県 高力英夫

 (評)日本の温泉や銭湯の多くは「入れ墨お断り」になっている。
 だから、隣の人に入れ墨があればちょっと引くかも。
 でも「いれずみ男」といわれると「ねずみ男」みたいでおかしい。

白石司子選

【特選】
The sweetness of persimmon is in the heart of Santokasan                     ボリヴェール・チャリーナ(フィリッピン)

          (意味:柿の甘さが山頭火さんの心)

(評)「柿」の句はこれまでにたくさんみてきたが、「柿」の「sweetness」
つまり、「甘さ・美しさ・愛らしさ・楽しさ」が、山頭火の「心」の中にある、
つまり「心」だと断定したのが斬新。子規も波郷も柿が大好きであったが、
これからは柿イコール山頭火の心と思ってしまいそうだ。
また、山頭火ではなく、「Santokasan」としたことで、山頭火に対する、
憧れ、また、尊敬の念みたいなものも伝わってくる。

【入選】
なの花に元気をもらって山のぼる  松山市小濱宗太朗(8歳)

(評)一句一章で単純明快。そして、黄色い「なの花」の取り合わせが効果的で、
作者だけではなく、一句を元気印、つまり印象明瞭にしている。
なの花に元気をもらった作者は、山のぼりの達成感をきっと味わったことだと思う。
大人になると技巧的になりがちだが、俳句だからとあまり難しく考えないで、
まず、言いたいことを素直にそのまま詠むことが大切。
そして、あとから五・七・五に凝縮させればいい。

本郷和子選

【特選】
山彦に山彦応え春になる          松山市 村上邦子

(評)「ヤッホー」と呼べば「ヤッホー」と応える山彦。だれでもよく経験したものである。
山峡や、谷間に向って大声を出せば、谺(こだま)となって返って来る。
季節は春になるところ。この句を声出して読むと本当に春が来た感じがする。
明快にスッキリと一句にしたところに共感。

【入選】
焼失の寺の地を這ふ仏の座       東温市 井門敬之

(評)昨年焼失した道後の宝厳寺のことであろう。焼けた跡地に春が近くなった頃、
仏の座の草を見つけ、作者は何を思ったのだろう。「仏の座」は春の七草の一つで、
地を這うように丈が短い。「仏」という語を、入れたことで少し救われた気がする。

熊野伸二選

【特選】
朝もやに軋む櫓の音蜆舟         松山市 東矢敏子

(評)払暁、一面に立ち込めている靄(もや)の中から「ギィー、ギィ―」と櫓の音が聞こえてくる。「あれは、シジミ漁に漕ぎ出す舟」と納得する。靄が夜明け直後の静謐を包み込む一方、櫓の音が、遠慮がちに一日の始まりを告げているようにも見える。墨絵のような朝の景が見える佳句詠まれた場所は、船でシジミ漁する島根県の宍道湖あたりか。

【入選】
ちぎれ雲一つ遊ばせ山眠る      松山市 岩井悦子

(評)下五の「山眠る」は「冬山惨淡として眠るが如く」(郭熙の臥遊録)に拠る冬の季語。自然が活動をストップして眠った状態に見える。その山々の上をちぎれ雲が流れているのを「遊ばせ」と詠んだ。静と動の対比の妙を感じさせるスケールの大きな句。その山々も、
いまや「春山淡冶にして笑うが如く」に活動を活発化している。


俳句ポスト児童賞


みゆきじ山松山じょうとせいくらべ  松山市小濱日南子(9歳)

(評)御幸寺山の方が松山城より、高いのであるが、両方の山を見比べた
とき、どちらが高いのかなと考えたのでしょう。せいくらべと思ったところがおもしろい。
(本郷、熊野)