今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2019年3月30日土曜日

会報『鉢の子45号」発行!

まつやま山頭火倶楽部の会報『鉢の子45号」が発行されました。
一草庵に置いています。
 ☆山頭火の未発表書簡(六)
 ☆山頭火文学碑紀行 こんなところにも自由律の句碑
 ☆山頭火が飲んだ店
 ☆山頭火第一句集 私家版折帖『鉢の子』等



 

「第27回山頭火俳句ポスト賞」の発表です。

「山頭火俳句ポスト賞」を発表します。 

表彰式は、4月29日(祝・)10周年記念俳句大会「俳句一草庵」会場で表彰します。

平成30年9月1~平成31年2月28日に俳句ポストに投函された句です。               
        
                       
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、218句。
(内、県外句は27句。)
 北海道恵庭市、東京都東大和市、埼玉県越谷市、京都市、徳島市、山口県光市、
 広島市。長崎市等。各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。 
                     




山頭火俳句ポスト大賞     
  人日の顔をはき出す通勤車     松山市 今岡美喜子
 【評】人に刑罰も与えず、七草粥を食べて無料息災や立身出世を願った「人の日」。
  である。「人日」。が、勤労は人間の義務でもあり、通勤車は「人日の顔」をはき出すのである。「人日の人」ではなく、「顔」、また、「はき出される」ではなく、「はき出す」としたところがこの句の眼目で、一月七日の無表情な人々の群れが想像される。(白石)  

山頭火一浴一杯賞
 杉林音なき音の初しぐれ      松山市  片岡祥子
  
【評】杉の林に初しぐれ、なんと美しい静かな情景であろうか。しぐれの音があるようでないのだ。けれどそれは「音なき音」であるというのだ。「無音も音の一つ」という句があるが。作者は心の中での聴覚で、その音を受けとめている・岩屋寺辺りの杉林が
見えてくる。(本郷)


山頭火柿しぐれ賞
初空や山翁語る樋又川     
         松山市 西 敏秋    
【評橋を渡ると一草庵である。俳句を作りつづけ、歩きつづけて生み出した血脈の句は、具象の中に詩魂の花がひらいた。ながれつつ澄む一年であった。この方と山頭火の語る声が聞こえてくる。(高橋)
                      
小西昭夫選
【特選】
 七夕や近づく櫂の軋む音       松山市 今岡美喜子
【評】年に一度の七夕の逢瀬。幸いに雨が降らなかったのだ。
 天の川を渡って来るのは織姫か彦星か。愛しい人を乗せた櫂の軋む音が
近づいて来る。もうすぐ逢える。心の高鳴りが聞こえてくる。自分の恋の
思いを七夕に託して象徴的に詠んだのかもしれない。

【入選】
落葉ひらりと襟もと掠めた     京都市 坂口智之
 【評】落葉がひらりと落ちてきて襟もとを掠めた。ただ、それだけのことなのだが、
 そのことが心に残ったのだ。自分を落葉に重ねたのだろうか。襟もとを掠めた落葉に心を寄せる孤独感が切ない。 
    
白石司子選

【特選】
 特急がマラソンを抜く春を抜く    松山市  長澤久仁子
【評】作者は特急列車、或いはバスを見ている、いや、乗っているとした方がいいだろ
   うか。それはぐんぐんとスピードアップし、マラソンを抜き、そして、春までも
   抜いていったのである。「マラソンを抜く」「春を抜く」のリフレインが、リズ
   ムよく情感を高める効果をあげている。
【入選】
 過ちも蹉跌もはるか冬銀河       松山市 西野周次   
【評】年齢と共に重ねてきた多くの「過ち」、そして「蹉跌」。中七で切れてはいるが、「はるか」は下五にも掛かり、時空を超え、冴え冴えと美しい「冬銀河」を見つめていると、そんな己が人生をもはるか遠くに思えるのである。「も」、「も」の脚韻が強調の効果を生み、しみじみとした思いが伝わる。

本郷和子選 

【特選】
 能登の海ムンクの叫ぶ濤の花      松山市 大川忠男
【評】昔、私も能登の海で濤の花を見たことがある。作者はその濤の花が岩に激しく打ちつけ、砕け散る様を見て思わずムンクの「叫び」を連想したのだろう。ムンク展が昨年は日本でも開催され、世界的に有名な「叫ぶ」を見るために大勢の人が押し掛けた。強烈なインパクトのある一句となった。

【入選】
ここに生きここが幸せ花蜜柑    松山市 加藤 卓   
  【評】おそらく、ここに生きている地は、花蜜柑の咲く伊予の地ではないだろうか。そして、作者はこの地に生きていることが幸せであると思っているのだ。花蜜柑の香りのする伊予に住み幸せな生活をしている。なんと理想的な人生ではないか。それを一句にできることも最高に幸せであろう。  
髙橋正治選 
【特選】
 大根蒔く老婆の指の太かりき    松山市  大野恵子  
【評】土はあらゆるものを包容し育む母なる大地である。少々の指の傷ならば、
   土を置いておけば治る。作物を愛する心は土に従う心である。その指から
   大きな収穫が生まれる。

【入選】
 靴紐を結び直すや春の風       松山市  渡部新子
  【評】一気に突走る思いを結び直して、さあ、肩の力を抜いて腰骨を立てて、
 胸をはって目的へ歩け歩け、爽やかな風はあなたです。