今週の山頭火句

今週の山頭火句 すわれば風がある秋の雑草  山頭火

2016年8月24日水曜日

『第7回山頭火検定』の受験者募集!

 「山頭火検定」募集のお知らせです。 

残暑が続いています、いつまで続くのでしょうか。


山頭火の命日が近づいてきました。

第7回目の「山頭火検定」を実施します。皆さん是非チャレンジしてください。




 第7回山頭火検定


試  験 日  平成28年10月10日(月・祝) 13:00~14:00


試験会場  清水公民館(℡ 089-924-7075)
          (松山市清水町3丁目170-4 勝山中学校裏門前)


検定料   一般 ¥1000  高校生以下  ¥500


      検定料の振込は、最寄の郵便局の「振込取扱票」で。
      ・振込先 口座記号番号 01680-3ー108377    
      ・加入者名   まつやま山頭火検定実行委員会            


募集期間  8月21日(日)~9月25日(日)


申込方法  ハガキまたはFAXで、下記の申込先へ。
       (住所・氏名・電話番号・年齢・性別を記入。)


試験要項  60問・択一式  正解率70%で合格認定。


『山頭火検定・公式テキスト』(¥600)より90%出題。


過去の検定問題は、HPのジャンル別情報の「山頭火検定問題」をクッリクすれば、参照できます。


※『山頭火検定・公式テキスト』は、子規記念博物館、一草庵で販売しています。
 遠隔地の方は、下記の<申込先>へご連絡ください。

 <申込先> 〒799-2651  愛媛県松山市堀江町甲1615-3
                    NPO法人まつやま山頭火倶楽部
                        TEL 090-6882-0004 
                        FAX 089-978-5959








<  連絡事項! >

 事前対策として、「山頭火検定テキスト」を教材として、山頭火勉強会を開催します。


      「山頭火講座」 受講料は、無料です

 日時 平成28年9月25日(日) 13:00~15:00
 会場 松山市ハーモニープラザ 3F 活動室1
       松山市若草町8-3 (089-933-9211)

2016年8月23日火曜日

「第6回一草庵夏の子どもまつり・親子俳句絆賞」の紹介です。



      一草庵・親子俳句絆賞』


  小西昭夫選

 特選湯築小学校〉

 くわがたの最強はさみゆび切れる     髙岡大悟(3年)
 せみの声家では我が子けんか中      髙岡真理子(母)

  ちょっと、わんぱくな大悟君が想像されます。くわがたのはさみのあいだにゆび
  をもって行ったのでしょうか。外では蝉が激しく鳴いていますが、家では兄弟げ
  んかの真最中。元気が何よりですが、ちょっと暑い夏です。

 入選〈姫山小学校〉 
 
 すずしそうソーダキャンディうみの色    河野一貴(2年)
 ぐんぐんとキュウリの芽がのびている   河野貴士(父)

  ソーダキャンディの色をうみの色だと感じた一貴くん。このソーダキャンディいか
 にもすずしくておいしそう。お父さんはぐんぐん伸びるキュウリの芽に注目
 一貴くん親子の素直な視線が気持ちいい。

 入選〈清水小学校〉 

 パパのよこわたしもおどるタコおどり   榎津志菜(2年)
 凧揚げるパパの横顔誇らしげ       榎津由美子(母)

 「タコ」つながりの楽しい親子。ひょっとしたら、志菜ちゃんはお父さんの真似をし
 てタコおどりをしているのだろうか。ひょうきんなお父様だ。そんな親子をお母さま
 は優しく見守っている。凧を誇らしげに揚げるお父様もお母さまの子どもかも。 

 入選〈清水小学校〉 

 ももきればあまいにがいのみわけつく  栗田紗梨菜(3年)
 にがいももパパが帰ったらあげなさい  栗田博子(母)

 言われてみれば、にがいもももあるような。きっただけで、あまいにがいのみわ
 がつくなんてすごい。もっとすごいのはお母さまだ。「にがいもも」は「パパが帰っ
 たらあげなさい」ときた。もう、笑うしかない。

白石司子選 
 
特選〈清水小学校〉  

 ベランダで見つけたクワガタ宝物     保手浜 凱(5年) 
 悪ガキに「もう捕まるなよ」とカゴひらく  保手浜 寛(父)

 子供は「ベランダで見つけたクワガタ」を「宝物」にしているのに、
 親はと言えば、「もう捕まるなよ」とカゴをひらき、逃がしている。
 このやりとりが何とも微笑ましい。自身の子を「悪ガキ」と言って
 いるところにも、しっかりとした親子の絆を感じる。 

入選 〈湯築小学校〉 

 じいちゃんとすいかとりあうおいしいな  藤田和馬(1年)
 右に西瓜左に我が子実家行く       藤田奈緒美(母)

 一人で食べるよりも、じいちゃんと取り合うすいかの方がおいしい
 よね。また、「右に西瓜左に我が子」で実家に行くという、お母さま
 にも家族愛を感じさせるものがある。「右に林檎」などでは、この母
 性の強さ、逞しさはとても表現できない。
 
入選〈湯築小学校〉

日やけしてけがの場所だけ白いまま     白川真圭(4年)
玉のあせ朝練で見るこの子の成長      白川春香(母)

 君は、日やけしても白いままのけがの場所に思春期独特の感慨みた
 いなものを抱いているのに、親はそんな君に「成長」を見ている。
 親子っていいなと思う。 
 
入選〈姫山小学校〉

シーツからばあちゃんのにおいぼん休み   近藤漱太(3年)
孫に会ふ支度も楽し明日は船           野崎操子(祖母)

 毎年、「ぼん休み」に行くばあちゃんの家。孫に会う支度の一環と
 して、「シーツ」も洗ったのだけど、君にとっては永遠に忘れるこ
 とのできない「ばあちゃんのにおい」。「明日は船」のフレーズが、
君が来るのを何よりも楽しみにしているばあちゃんの姿を彷彿とさせる。

本郷和子選 

特選〈姫山小学校〉 

 食べたいなカルピス味の入道雲     守谷柚花(4年)
 もう一杯そそぎ沸き立つ積乱雲     守谷真由美(母)


  入道雲はもこもこふわふわして、わた菓子のようなのか、
  カルピスの味のする雲なんておいしそう。

  これはビールのあわのようでしょうか、もう一杯そそぐと
  沸き立つ雲のようなのです。母子共に雲を材料にした素晴
   らしい句です。 
   
 入選〈姫山小学校〉
  
 つゆ空へ明日天気にしておくれ     越智ひなた(4年)
 ホタル追う大人も子供も同じ顔      越智直子(祖母)

  「明日天気にしておくれ」の唄の言葉がちょうど七、五になり
  「つゆ空へ」を上に持ってきただけで俳句になったのですね、
 おもしろいことです。 

 大人も子供も蛍を追う時は目が輝き笑顔になるのです、その
 時の情景が見えるようです。

 入選〈清水小学校〉 

  兄ちゃんとスイカの種のとばしっこ   松原 愛(4年)
  ふるさとの父から届く初スイカ      松原知津子(母)

 庭でお兄ちゃんとスイカの種をとばしてどちらが遠くへ飛ぶか競争して
  いるのでしょう。そんなことも、きちんと俳句になるということです。

 田舎の父上が西瓜を作っているのですね、今年初めてとれたおいしい西
 瓜が届いたので、それを食べたら、右の句の種どばしっこができたのでしょう。
  
 入選〈湯築小学校〉 
 
   なつのあめやねにあたって大さわぎ   山本萌亜里(2年)
  セミにもまけぬ娘二人の話声          山本 恵(母)

 夕立かなんか急にザァーザァー降ってきた雨なのかそれを「大さわぎ」と
  したことが大変上手。雨も人間も大さわぎしたみたいです。

 蝉の鳴き声はやかましいと思うほどにぎやかです。それにも負けないほど
  女の子二人の話声。元気で明るくよくしゃべる、姉妹なのでしょう。
  お母さんもその中に入って女三人寄れば姦しいと言います。 
 
   
熊野伸二選 

特選〈湯築小学校〉 

 はつなすびひかるむらさきアメジスト 永井美羽(2年)
  夏の夜川面におどる蛍かな       永井優子(母)

 美羽ちゃんは、初めてなったナスが、紫色に光っているのを
  「アメジストのよう」と感心。お母さんは、蛍が踊るように川面
 を飛ぶさまに目を奪われています。どちらも自然の美しを詠んでいます。
 
入選〈清水小学校〉 

 にちようびつゆのはれまにくさむしり 栗田兼光(1年)
 泥まみれよくできましたと髪洗ふ   栗田博子(母)

 雨続きで、庭にいっぱい生えた草むしりを手伝ったのかな。
  泥まみれになったわが子に「よく頑張ったね」と感謝しながら、
  お母さんが髪を洗ってくださったのでしょう。

入選〈姫山小学校〉

夏祭りくじもしゃ的も大当たり         三好詠太(4年)
とげ知らぬ子の小さき手茄子を採る  三好美和(母)

 夏祭りに行くと、いろいろな楽しみがあります。くじを引いても
 射的をしてもうまくいったようで、おめでとう。でもナスにとげ
 があるのは知らなかったようだね。うっかり手を出すと「痛いっ」となるよ。

入選〈湯築小学校〉

雨あがり頭の上をホタルまう     仙波楓花(5年)
乾かない靴と洗濯梅雨の空      仙波周子(母)

ホタルが飛び始め、頭の上をこえていくのをうっとり見とれている
少女が目に浮かびます。お母さんの方は、じめじめした梅雨のため、
家族の靴や洗濯物が乾きにくいのを嘆いています。親子で夢と現実
の世界を見せてくれました。







「第6回一草庵・夏の子どもまつり俳句賞」の紹介です。


『第6回一草庵・夏の子どもまつり俳句賞』
                                      
                    
小西昭夫・選
【特選】5時間目空のすいとう汗ぬぐう
                    清水小6年   一色美尋
暑いですね。夏休み前の授業も暑さとの戦い。熱中症にかかると大変なので、
「すいとう」は必需品ですね。それでも、暑い日や体育の後などはゴクゴク飲んで
しまいます。そんな日は、5時間目にはもう「すいとう」が空になってしまいます。
汗をぬぐいながらの授業ですね。がんばれ。
 
【入選】プールに写るまよいのない空私の心    
                    姫山小6年   森 藍加

楽しみなプールの時間です。空は雲ひとつない青空なのでしょう。
プールにはその青空がくっきりと写っています。その青空をまよいのない空だと
感じました。私の心と同じです。
「まよいのない空」、「私の心」のたたみかけるリズムがいいですね。

【入選】日焼けしてみんなだれだかわからない   
                    湯築小6年   富永美紅

 おとなは日焼けを気にして、特に女性はいろいろな対策をしますが、
元気な子供にはそんなの関係ない。みんな誰だかわからなくなるくらい
真っ黒になっています。それが子どもの勲章ですね。

【佳作】あめんぼに教えてもらうおよぎ方 
                    姫山小3年    松浦美月

美月ちゃんはおよぎが得意なのでしょうか。それとも、あまり得意じゃない
のでしょうか。どちらにしても、「あめんぼ」は軽やかにおよいでいます。
それをいっしょうけんめい観察しているのですね。きっとおよぎがじょうず
になったことでしょう。

【佳作】 ゆかた着て道後の町へ出かけてく      
                     湯築小6年  佐々木珠吏

道後の町のお祭りでしょうか。ゆかたを着て出かけて行きます。いつもと違って
ゆかたを着ているので特別な感じです。きっと、おこづかいをしっかり握りしめ
ていることでしょう。


白石司子・選

特選】日やけしていろんな人にほめられる    
                   湯築小3年  上村空楽
 
 勉強や、スポーツなどで頑張って「ほめられる」のは当たり前なんだけ
ど、「日やけ」してもほめられるんだ!それも家族だけでなく、「いろ
んな人に」!真っ黒に日やけした、ちょっぴりてれくさそうな君の姿が
一句全体から想像され、思わずほほえんでしまう。

【入選】つめたいねありもおどろくかきごおり 
                    清水小2年 若松桃花

もしかしたら、「かきごおり」を地面かどこかにこぼしてしまったのか
しれないが、「つめたいね」と「おどろく」のフレーズが、ありさん
と一緒にかきごおりを食べているような君のやさしさを感じる。
                        
【入選】まどの外すっと風ふくあげはちょう 
                    姫山小3年 永井花菜

 あげはちょうを本当に見たのかもしれないが、まどの外をすっとふく風に、
 あげはちょうの気配を感じたとも鑑賞できる句で、「すっと」のオノマトペ
 が効果的!この感性、大切にして!
                               
【佳作】とうもろこし緑の服ぬぎマッチョマン  
                    湯築小4年 白川真圭
 
 とうもろこしの皮を剥くことを、「とうもろこし緑の服ぬぎ」としたのもす
 ごいが、そこからムキムキの「マッチョマン」を登場させたのがこの句の発見!
 拍手!こういった捉え方は大人になるにしたがってできなくなってしまう。                       
【佳作】風がふく森林の中木がしゃべる     
                     清水小6年 石山葉琉
  
この句も「風」が効果的。風が自然に変化を起こさせ、しゃべるはずない
「森林の木」をしゃべらせたのだ。心地よい風に包まれ、自然と交感して
いる君が想像される。


本郷和子・選

【特選】プチトマト真っ赤な幸せもう一つ 
                     湯築小4年  炭谷 優

プチトマトが真っ赤にうれている。それを幸せという作者はとても元気で明るい
子供でしょう。一つ食べて又、もう一つ食べたのか、赤いプチトマトは本当に幸
せのかたまりのように思えます。

【入選】土の中やっとでてきてセミになる    
                     清水小4年   中嶋優聖
 
セミは何年もの間土の中にいて、幼虫が木にはい上がりカラを脱いでセミになり
一週間のいのちなのです。「やっとでてきて」と言う言葉にセミに対するやさし
さを感じます。 
 
【入選】梅雨空に徳島にいる父思う         
                     姫山小4年   野口咲歩

 仕事で単身赴任しているお父さんのことでしょうか。すっきりしない梅雨の空
 を見てお父さんどうしてるかな、元気かな、と少し心配な気持ちがでています。

【佳作】さあ泳ごうプールにうつるぼくの顔   
                      姫山小6年   垂水 凛

 たしかに泳ぐ前プールをのぞき見ると、自分の顔がうつっていたというのです。
 その発見がおもしろく「さあ泳ごう」とはり切った気持ちがすばらしい。

【佳作】せせらぎの音に混じりて蛍飛ぶ      
                                        湯築小6年 荒木亮祐

 蛍はきれいな水辺から生まれます。せせらぎの音が聞こえそう、
  そして蛍の飛ぶ様子もこの句から見えてきそうです。
                               
熊野伸二・選
  
【特選】じいちゃんの笑顔とどいた夏野菜  
                     湯築小6年 寒川日花里

おじいちゃんから、自分で育てたらしい夏野菜が孫の家に届いた。
「子や孫に美味しい野菜を食べさせたい」と、汗を流して栽培してくれたに違いない。   孫娘は、その野菜に、いつもの優しいおじいちゃんの笑顔が添えられているように感
じている。

【入選】坂道を梅雨といっしょに下校する  
                                    姫山小4年 髙橋快秀

作者の通う小学校は、小高い場所にあって見晴らしがよい。授業が終わって
「さあ帰ろう」と思ったら外は雨。梅雨季には仕方がない。
降り続く雨の流れる坂道を、梅雨と一緒に下校するのです。

【入選】土の中デビューをまってるかぶと虫     
                                       湯築小2年 脇本 心

カブトムシの幼虫は腐葉土の中で成長し、立派な鎧兜を付けた成虫になってから
姿を現しますね。土の中にいる間は、いわばデビュー前というわけです。
一人前になるためには、じっと我慢する時期が必要なのかな。

【佳作】水色の溶け落ちていくかき氷
                               清水小6年  松岡 玄

暑い外出先から帰って、冷たい水を一杯飲むと、救われますね。
氷がどう溶けるかなど気にもしませんが、コップに入れたかき氷を観察すれば、
きっと水色に溶け落ちていくでしょう。静かで、哲学的雰囲気を感じさせてくれます。

【佳作】かさとじてびしょぬれ楽し夏の雨      
                                       湯築小2年 田中祐樹


春の小ぬか雨が降るころなら「春雨じゃ、濡れて行こう」というかもしれないが、
夏の激しい雨ではちょっとネ。しかし、元気者の2年生は、傘を閉じてびしょぬ
れを楽しむ。すごいね。でも風邪をひかないでね。


2016年8月18日木曜日

「一草庵・夏の子どもまつり」の報告です!

「第6回一草庵・夏の子どもまつり」 8月6日(土)の紹介です。

事前の俳句募集、清水地区学校の協力、そうめん竹流し台の作成等の準備を関係者一同で
準備しました。そのお蔭で、150人もの人が一草庵の夏まつりを楽しんでくれました。

事前には、愛媛新聞が写真入りでイベントの紹介をしてくれました。


もちろん、第6回の子ども夏まつりの様子を「山頭火にふれた夏として紹介してくれました。

以下、写真で紹介します。




2016年8月17日水曜日

『第20回山頭火俳句ポスト賞』の表彰!

『第20回山頭火俳句ポスト賞』の表彰。

(投句期間は、28年3月1日~6月30日)


表彰式は、「一草庵夏の子どもまつり」開催日8月6日(土)に一草庵で行いました。
                                           
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は147句。
(内、県外句の数15句 東京都国立市、福井市、千葉市川市、名古屋市、姫路市市、神奈川県葉山、埼玉県東松山市、大阪市、長崎市等)の投句の中より、各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。) 
   
                   

山頭火俳句ポスト大賞

かぶとむし大きくなったなつやすみ   松山市 池田篤史

【評】夜行性の「かぶとむし」の採集は時間帯的にも結構大変だけど、
それだからこそ、ゲットした時の喜びは大きい。7月頃に捕らえると、
二か月ほど飼育できるので、もしかしたら飼育のみでなく、繁殖させて
幼虫も育てたのかもしれない。そして、自然の中で採集し、飼育、繁殖
させるという過程で、かぶとむしだけでなく、君自身もこの「なつやす
み」に「大きくなった」んだね。(白石)

山頭火一浴一杯賞

職すてしよりの気儘や夕団扇   松山市 丹下ひろし

【評】仕事から離れてすべてから解放され本当に自由になったことを作者気まま
あると言っている。気ままにできることを喜び、幸せ思っていだろう。
季語の「夕団扇」にその内面が表現されている。Tシャツと短パン縁側に腰かけ
扇をバタバタしているお父さんが目に浮かぶ。(本郷)

山頭火柿しぐれ賞

梅雨寒の誰来るでなき日暮れかな   松山市 門田啓子

【評】梅雨季は、むしむし暑い事が多いが、たまに冷える。そんな一日、
おそらく独り身の作者は、終日家で過ごし、日暮れ時に至った。「今日も
誰も来なかったな」と思う。誰かの来訪を特に期待はしないが、ちょっぴ
り寂しい気持ちもよぎる。「人は所詮一人で生まれ、一人で没する」と悟
りながら「されどー」と思う人情。人柄の落ち着き、暮らしの静謐が句に
滲む。(熊野)

小西昭夫選
【特選】かきごおりあたまがこおってうごけない 松山市 池田篤史
 【評】かき氷を食べて頭がキーンとなることは誰もが経験することであり、
  それを詠んだ句も多いが、「あたまがこおって」はこれまで見なかった
  表現だ。この表現で見事な詩になった。
【入選】春光を紙飛行機に折り込む   松山市 岡崎 唯
【評】下五の「折り込む」の字足らずの表現が、自由律ぽくもあるし、急に梯子を   
 外されたような面白さもある。破調が魅力の一 句。
白石司子選
【特選】青信号人波くぐる夏ツバメ       松山市 亀井紀子
【評】春、日本に渡来した「ツバメ」は、巣作りをし、「夏」には、そこで子を産み
てる。一日に何度も「人波をくぐ」りながら、餌を求めて飛び立ち、忙しく子育てを
ている、そんな親ツバメに対する作者のやさしい眼差しが「青信号」なのである。


【入選】新樹光平和通一丁目     松山浅海好美
【評】地名を詠み込む句は割と難しいので避けてしまいがちだが、掲句では「平和通」、また、「一丁目」が効果的だ。夏の「光」を浴びて輝く「新樹」の瑞々しい通り、それも二丁目でもなく、三丁目でもなく、一丁目、そんなところを散策したいし、また、住んでみたい、と思わせる作品である。


本郷和子選
【特選】水にまる描いて陣どる水馬     松山市 今岡美喜子
【評】水馬が水を掻くたびに水輪を描くことは当たり前であるが、丸
を描いて陣どるという思いつきが愉快だ。この円の中は自分の陣内
 だから、侵入させないという水馬の意志と捉えてもよい。水馬の句
 は山のようにあり類句も多い、でもそれはしかたないことである。
  
【入選】夏みかん雨の遍路にもたせけり  長崎市 津田番茶

 【評】四国の地ならではの句だ。おもてなしの精神のこもったあたたか
  い句である。雨の日のお遍路さんをいたわってどうぞ召し上がれと、
  夏みかんを持たせたのだろう。ただ、それだけのことだが、それだ
けのことをする人と、それだけを一句にする人を尊敬したい。遍路
は春の季語であるが、この句は、あえて、夏遍路として詠み、夏み
かんと季重なりとしても寛大に受け入れたい。

熊野伸二選
特選】 切通しゆくや一閑夏つばめ   松山市 山本こうじ 
      
【評】燕の飛翔を見ると「あの高速でよく飛べるものよ」といつも感心する。しかも、飛びながら餌の虫を捕らえる。地面すれすれから急に高みへ身を翻す。子育ても終
 盤にかかった「夏つばめ」は忙しい。餌を求め、地形の変化に即応する飛翔は、一
 瞬ぴかっと光るが如き瞬間の早業。「一閃」の語が効いている。

【入選】寺町をもとほる茅花流しかな    松山市 菊野晄子

【評】「もとほる」の現代仮名遣いは「もとおる」。漢字では「徘徊る」と書く。
 林古径作詞の童謡・唱歌「浜辺の歌」の二番は「ゆうべ浜辺をもとおればー」で始
 まる。「まわる、めぐる」の意味。「茅花」は「茅萱」ともいうイネ科の多年草。
 その花は咲ききって絮(わた)となり、ほぐれて飛ぶ。そのころ吹く湿気の多い雨
 交じりの南風が「茅花流し」だ。一草庵周辺の寺町の風情。