今週の山頭火句

今週の山頭火句 さてどちらへ行かう風がふく  山頭火

2011年7月3日日曜日

一草庵「今月の山頭火句」(7月)

 鴉啼いてわたしも一人
鴉啼いている寒暮、「お前も一人か、私も一人だよ、みんな生まれる時も死を迎える時も、一人なんだよ」つぶやく旅人。しかし日暮れは、みんな明りの灯る家路をさしているのに……私は一人。(ちとせ)

 尾崎放哉は、大正15年4月7日小豆島南郷庵でさびしく没す。それを知らずひとり山頭火は、4月10日行乞流転の旅に出た。
 旅の途中で、その死を知ったのであろう。

この句には、放哉居士の作に和してと前書きがある。
師・井泉水は放哉の「烏がだまって飛んでいった」に和したといっているが、「咳をしても一人」のように思われる。
「咳をしても一人」は、無駄のない完璧な100満点の句で、頭のいい人が好きなようだ。
この句、ほんとうに一人ぼっちで、限りなく淋しい、そして、そこには誰もいない。 内なる世界へと深く深く入っていくようだ。

山頭火は、カラスの声に共鳴する。山頭火の句には、いつもコウロギや蝶々やドンボが登場し、小宇宙の世界が広がる。そして、あなたはどうですかと、問いかけてくる。
(松山でお会いした宗教学者・山折哲雄さんは、この句が一番好きですと
いっていました。)
山頭火の句の英訳を紹介しておきます。
 The cawing of  a crow -
  I also am alone.               ジェイムズ・グリーン


<一口メモ>
山頭火は、『層雲』へ大正9年14句を発表して以来、跡をたち大正15年層雲へ7句を発表し復活する。

分け入つても分け入つても 青い山
鴉啼いて私も一人
△さみだるる大きな仏さま
しとどに濡れて之は道しるべの石
炎天をいただいて乞ひ歩く
△日ざかりの水鳥は流れる
木の葉散り来る歩きつめる

この層雲発表句は、松山一草庵で昭和15年2月、自選句集「草木塔」をまとめた句稿では次のようになる。
△2句は削除され、「生死の中の雪ふりしきる」が追加挿入される。

分け入つても分け入つても 青い山 
しどどに濡れてこれは道しるべの石
炎天をいただいて乞ひ歩く
鴉啼いてわたしも一人
生死の中の雪ふりしきる
木の葉散る歩きつめる
この連作6句が、山頭火が復活する大正15年の句。
一草庵に咲く、ヒメオオギスイセン

誰が植えたのかわかりませんが、いま一草庵にヒメオオギスイセンが咲いています。
葉が扇のようで、花が水仙に似ているので、こんな名前が付いたそうです。
水槽に泳ぐ金魚のようにも見えます。

すっかり忘れていました。一草庵の中のカレンダーです。
メンバーの山頭火案内人の方がもってきてくれた、西予市にある野村学園の皆さんが作成された
「どろんこのうた」版画カレンダーです。
今年は山頭火のカレンダー、7月・8月はこの句の版画でした。
わたしも一人だと自覚しながら、杖を握って歩く若い姿の山頭火、からすも前をめざしてとんでいきます。
明るく、力強く、きれいに澄み切った作品です、見事に山頭火さんの句が表現されています。
励ましてくれるのは、「なでしこジャパン」だけでなかった。