今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2014年8月14日木曜日

『第14回山頭火俳句ポスト賞』を発表します。


おめでとうございます。
(投句期間 263月1日~31日)
      
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は121句。
(内、県外句20句。
 東京・日野市・東村山市・千葉市・埼玉・京都・大坂・高槻市
・阪南市・広島市・徳島市・アメリカよりの投句もありました。)
                                  
   
表彰式は、8月19日(火・)に一草庵で行います。






 
  山頭火俳句ポスト賞               


 向日葵やアウシュビッツへ鉄路延ぶ  松山市 越智光子

(評)「向日葵」は盛夏に咲く明るく、生命力の象徴のような大輪の花。
一方「アウシュビッツ」は第二次世界大戦中、ナチス政権下のドイツが、150万人ものユダヤ人などをガス室へ送った強制収容所のあった占領下ポーランド南部の地名。向日葵畑の向こうに伸びる線路がアウシュビッツを目指しているとすれば、
それは「生」から「死」へのレール。一七文字にこれほど重い内容が盛られてる。(熊野)

 山頭火一浴一杯賞

友とかぐこの風のかおり   埼玉県朝霧市 渡辺直紀

 (評)さわやかな風のかおりを友と一緒にかぐ。友との充実した時間が見事に
 書きとめられている自由律の秀句だ。(小西)



 小西昭夫選

【特選】
 向日葵を咲かせて村の駐在所  松山市 浅海好美

 (評)向日葵を咲かせた村の駐在所。それだけで平和な村の生活が見えてくる。
  実に気持ちのいい句である。


【入選】
 新樹光生みたて卵てのひらに  松山市 中本静枝


(評)若葉が芽吹いてみずみずしい新緑の樹木の光り。
 てのひらには生みたて卵。みずみずしい命の協奏曲である。


白石司子選

【特選】
 噴水の憤懣宙に及びゐし    松山市 西野周次

()夏の盛りには涼しさを誘う噴水であるが、「憤懣」とあることから、
世相を観じた観相の句と捉えていいだろうか。新聞の紙面などを賑わして
いる様々な出来事。それらに対する作者の、いや、われわれ庶民の怒りが
「宙に及びゐし」なのである。「人類の」などではなく、「噴水の」とし
たことが、一句を詩へと昇華させている。
       

【入選】
 どこを分けても白髪       千葉県富里市 小島夏嵐


()「まつすぐな道でさみしい」のような、山頭火が得意とした二小節構造で、「分け入つても分け入つても青い山」のもじりとも考えられる作品である。
少し遊びすぎのような感じがしないでもないが、一句全体からは、「をかしみ」
から、やがて「あはれ」の世界へと読者を誘う。


本郷和子選

【特選】
 落下傘海に落ちたら大海月             松山市 今岡美喜子


(評)ゆらゆらと海の中に揺れている海月は傘を開いて漂う。
  空を飛ぶ落下傘は傘を開いてやがて落下するからその名がある、海に落

ちたらそれが大海月になるという子供のような純粋無垢な発想は愉快だ。


【入選】
 阿波路より昼は遍路で夜は酒        徳島市 青木 治


(評)お遍路さんになって阿波路から伊予路まで来たのか、一草庵へ立ち寄り
山頭火を思い今夜はどこで一杯やろうかと、平成の山頭火さんいなりきっ
ているのかも。生きることの多難な世にあって、この句の生き方に共鳴する人
も多いだろう。

熊野伸二選

【特選】
 いらえなき人に抱かれて夏の夢    松山市 越智 光子 

(評)「応えなき」は「返事がない」の意。返事のない人=つまり亡くなった人
 と解釈できる。夏の短夜に、最愛の人に抱かれた夢をみたか、あるいは夢想し
 たか。まどろみの夢の中で、最愛の人に抱かれた幸せと切なさがある句。


【入選】
 水脈長き夏至の夕べの貨物船    東温市 井門 敬之


(評)「夏至」は、年間でもっとも昼が長く、夜が短い。その夕べ、小高い場所
 から波静かな瀬戸内海を眺めると、一隻の貨物船が長々と航跡を曳いて進んで
 いる。穏やかな瀬戸の景が鮮やかに詠まれた。



俳句ポスト児童賞


 山登りゆうれいだけと遊んだよ    松山市 松田彩10歳)

(評)本当はこわいはずのゆうれい。でも、山登りしたことで、山の空気と 
 同じように心の中も澄んできて、ゆうれいと友達になれたんだね。
 「ゆうれいと」ではなく、「ゆうれいだけと」としたことで、いつもとは
 違う世界を感じている作者がうかがえるし、「遊んだよ」の口語表現が一
 句を明るいものにしている。(白石)