今週の山頭火句

今週の山頭火句 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし 山頭火

2018年4月18日水曜日

『第25回山頭火俳句ポスト賞』の発表!

『第25回山頭火俳句ポスト賞』を発表します。

山頭火俳句ポストの表彰も25回を迎えます。                 
表彰式は、四月二九日(祝・日)「俳句一草庵」開催日におこないます。
俳句ポストへ
平成29年11月1~30年2月28日に投函された句です。
                                                   
  一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、116句。
 (内、県外句は7句。) 埼玉県坂戸市、防府市、アメリカ、オーストラリア等、
  投句の中より、各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。 




山頭火俳句ポスト大賞
風光る坂のぼりきり兜太消ゆ   松山市 田村七重
【評】金子兜太は。俳句界に大きな足跡を残し、人生を全うした人である。
「坂のぼりきり」の語でその偉業を表現している。「風光る」の季語は別
として動詞が目につくが、それでもこの一句は兜太の人生、生きざま、俳
句を讃え、偲び悼む心が伝わる句である。(本郷)

山頭火一浴一杯賞
 授かりしちんぽこの子と初湯かな    松山市 丹下恵美子


【評】明らかに山頭火が湯田温泉で詠んだ「ちんぽこもおそそも湧いてあふ
れる湯」を下敷きにしている。子供とも孫とも読めるが男の子を授かった初
湯の喜びが溢れている。山頭火への見事な挨拶句である。(小西)

山頭火柿しぐれ賞
tall winter tree leaves fall of old life
 昔の人生捨てるかに落葉し冬樹   USA Julian Martinez  
   
【評落葉し、孤高のごとく作者の眼前に聳立している冬樹。「落葉」を擬人化した「昔の人生捨てるかに」は、作者の理想とする生命の在りようそのもののようでも
 あり、泰然自若とした「冬樹」に思いの集約をみる。(白石)

小西昭夫選

【特選】
 シーツ干す冬青空の真ん中へ     松山市 渡部新子


 【評】久しぶりの冬青空にシーツを干したのだが、そのシーツは冬青空の真
ん中へ干したのだ。何とも大胆な表現だが、それが開放的で気持ちがいい。
このシーツよく陽を吸い込んだことだろう。

【入選】
秋風の玄関へ落葉を運ぶ        松山市 宮森足歩
【評】この句は十七文字だが、五七五のリズムではない。五五七、むしろ五
五四三のリズムの句と読んだ方がいいだろうか。季語も二つあるが意味は
明快。自由律の句として面白い。

白石司子選

【特選】
椿まつり金子兜太の逝く朝     松山市  亀井崇司

【評】我が師・金子兜太。4月14日・15日に開催される予定だった秩父
俳句道場への申し込みを1月初めに済ませ、指導していただくのを楽しみ
にしていたが、それを待たずに逝去されてしまった。俳句人生の象徴のよ
うな戒名「海程院大航句極居士」。
春を呼ぶはずである「椿まつり」であるが、兜太先生がお元気なうちに「海
程賞」をいただけたことが私にとってせめてもの救いであり、この句に出会
えたおかげで「椿まつり」の度ごとに師を思い出すだろう。下五「朝」で止
めたことが訃報に対する作者の驚きであり、感情をストレートに表出せずに
省略を効かせた句。

【入選】
今日は青空だったよ一草庵   埼玉県坂戸市 中川博郎

【評】一草庵、いや、山頭火に呼びかけているような句である。いろいろとあったけど「今日は青空」。そう、前向きに生きないとね!嘗て、兜太先生が「口語は俳句の幅を広げる」と言われていたが、この句も「だったよ」の口語がいい!元気印にさせる句だ。

本郷和子選 

【特選】
啓蟄やスリッパ箱は空っぽに     松山市 橋本伎代子
【評】啓蟄は、土中に冬眠していた虫たちが穴を出てくるという意味である。
 スリッパ箱が空っぽということは、スリッパをはいた人たちが皆、どこかの部屋に
 行ったということ、啓蟄の虫たちが出るように、人間にも動きがあった。
 一句は俳諧味のある句となった。

【入選】
tall winter tree leaves fall of old life
 昔の人生捨てるかに落葉し冬樹   USA Julian Martinez

  【評】「過去捨てるかに落葉する一樹」であればいい句となるが、英語で
「ウインターツリー」あるから冬樹と訳したのであろう。
季語が二つ入った点を除けばおもしろい発想の句である。

まつやま山頭火倶楽部賞
冬銀河夜間飛行の灯を飲めり      松山市 岡崎
【評】「夜間飛行の灯を飲めり」言葉にならぬ一緒の思いをすっきり
と言い切ったところに、悠久の時空を超えた大きな世界が見える。
小さな俳句の土俵の中で飛躍し過ぎる表現は作意が鼻につくが、揚句
からは写生を超えた美しさを“はっと”感じる。あの城達也の音楽番
組・ジェットストリームのナレーションを思い出さずにはいられない。
「夜間飛行の夜の静寂(しじま)のなんと饒舌なことでしょうか」。
   冬の星座に吸い込まれる貴女の「今」の感動が伝わる。