今週の山頭火句

今週の山頭火句 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし 山頭火

2019年10月5日土曜日

第28回山頭火俳句ポスト賞を発表します!

一草庵の柿、今年は豊作で美味しそうです。
     山頭火さん、いただきますよ。

            手にのせて柿のすがたのほれぼれ赤く 山頭火

「28回山頭火俳句ポスト賞」を発表します。 

  表彰式は、10月13日(日)山頭火一草庵まつりの会場で行います。

  2019年3月1~8月31日に俳句ポストに投函された句です。               
        
                  






   
 一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、162句。
(内、県外句は31句。)東京都、千葉県柏市、
 名古屋市、京都宇治市、藤沢市、高松市、熊本市)。
 各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。




山頭火俳句ポスト大賞

道をしへ一草庵まで案内する   松山市 浅海好美

【評】「道をしへ」とは「斑猫」とか「道しるべ」ともいう。体長2センチ
   ほどで黒地に赤、黄、紫などの斑紋がある。人が近づくと飛び立ち振り
   返るようにしてまた飛ぶ。その様を「道をしえ」と言われている。
   他ならぬ一草庵まで案内するように飛んでいるのだ。
   山頭火終焉の地・一草庵には、だれもが、虫までもが心惹かれ引き寄せ
   られる場所なのだろう。(本郷)

山頭火一浴一杯賞

初生りの胡瓜一本白磁皿       松山市 水口俊幸

【評】度々の風にも倒れず土に根を張り花を咲かせ実った野菜の味は淡白ですが、妙味を持っています。土の朝の微笑を皿に一本、スケッチしている姿が見えます。(髙橋)

山頭火柿しぐれ賞

人恋し酒乞いし餅もらう   今治市 鈴鹿鈴々 

【評】山頭火の人生を凝縮したような一句だ。人恋しくて、酒が好き。
 餅は彼の行乞生活の象徴でもあろう。「恋し」と「乞いし」など同じ音を別
 のものにしたリフレインや「餅」「もらう」という音への配慮が行き届いて
 いる。自由律の句であるが、韻を意識した五、五、五のリズムは定型を感じ
 させるところもある。(小西)

小西昭夫選

【特選】万緑の奥も万緑ダム眠る    松山市 本荘松峯 

【評】ダム湖周辺は一面の万緑。しかしその万緑の奥にも万緑が広がっている。湖はその湖面に一面の万緑を静に映している。「ダム眠る」といわれると冬を連想したが、訪れる人のない静かなダムなのだろう。自然の営み、人間の営みに心が至る。

【入選】薔薇園で選びし花を家族とす 松山市 太田辰砂 

【評】薔薇を家族にするなんて素敵だなあ。家族にしたのだから、切り花ではないだろう。お気に入りの小さな鉢植えの薔薇があったのだろう。新しい家族を迎えた華やぎが伝わってくる。

白石司子選

【特選】盤石の滝に人語の消されけり 熊本県合志市  牛嶋久 

【評】「滝の音に」などではなく、「盤石の滝に」としたのが、この句の眼目。「盤石」から、大きな岩のみでなく、強固で平然とした様子などが伝わり、そういった大いなるものの前では、人間の言葉、人語などは消されてしまった、無用だったのである。切字「けり」のきっぱり感も効果的だ。

【入選】地球儀の首かしげをり赤い夏  松山市 今岡美喜子

【評】地球をかたどったものである「地球儀」が、鉛直方向に傾斜しているのは当たり前であるが、「首かしげをり」と擬人法を活用したところにこの句の面白味がある。そして、「赤い夏」が、地球温暖化などを想像させ、地球儀のみでなく、作者も「この地球大丈夫なのかな」と首をかしげているのである。

本郷和子選

特選】仰ぐ虹またぐ虹あり水たまり  松山市 今岡美喜子 

【評】仰ぐ虹は当然であるが、跨ぐ虹とは、水たまりに映っている虹のことであろうか。虹が映るほどの水たまりとは、果たして人が跨げるほどの大きさなのか。あれこれ言うまでもなく、水たまりは澄んできれいな空と虹を映していたということ。

【入選】夏空のかつ攫ひたる大飛球   松山市 西野周次

 【評】ホームランである。夏空が「かっ攫う」という表現に驚く。「攫う」や消える」「見失う」ではおもしろくない。「かっ攫う」とあればよりスケールが大きく言葉のキレが良い。その野球のボールは、結局、場外か又は二階席に飛び込んだのか。夏空に飛んで行って行方不明だともっと面白い。

髙橋正治選

【特選】使うこと無くて形見の夏帽子   松山市  大野恵子

【評】巡り来た今年の夏の陽を浴びている、ネガフィルムが心の中に写っているようです。あの日あの時の、やさしい言葉がほしいと願ってみたいですね。

【入選】すだれ越し未練の手を振るさようなら 
        
                         松山市 橋本伎代子

【評】女性という静の支え、男性は動です。現実のなかの泣き笑いの主役、さようならは無駄ではないですね。月日が過ぎれば、思い出となる。