今週の山頭火句

今週の山頭火句 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし 山頭火

2020年3月27日金曜日

第29回山頭火俳句ポスト賞の発表!

「第29回山頭火俳句ポスト賞」を発表します。


 


(投句期間 2019~2020年2月29日)                                               

表彰式は、4月29日(祝)1「公開俳句大会・俳句一草庵」会場で表彰。
               
        
                       
   一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、195句。
 (内、県外句は26句。)東京、塩釜市、長野上田市、京都八幡市、
  宝塚市、三原市、広島市、山口市、高知市。

                     




山頭火俳句ポスト大賞     
  山頭火讃ふ琵琶の音秋気澄む     西条市 山内智里     
  【評】琵琶の音で、青空も微風も、光も木立も、濁り水も澄んでくる。一抹の
 哀愁を含んだ音色は久遠の響き、心を浄化さす。山頭火の命日に行われた
「山頭火一草庵祭」での句だ。(髙橋) 

山頭火一浴一杯賞
 婆のつく餅はんごろしみなごろし   松山市 近藤節子 


【評】一般的に「はんごろし」「みなごろし」というのは、おはぎ(ぼた餅)
使われる。蒸したもち米を半分つぶしたのが「はんごろし」、全部つぶしたのが「みなごろし」である。しかし、おはぎを「つく」というだろうか。
お福餅を「はんごろし」、搗きあげた餅を「みなごろし」というには無理がある
だろうが、「はんごろしみなごろし」の発見に一票。(小西)
  
山頭火柿しぐれ賞
蒟蒻の踏ん張り時や針供養     松山市 奥村繁子    【評折れたり曲がったりした針ではなく、「蒟蒻」に注目したところが
この手柄。
一生懸命働いてきた針に楽をしてもらう為に、柔らかいものに刺して
針を養し、裁縫の上達を願ったりするのであるが、多くの針に刺される側か
らすれば耐えきれぬはずで、中七「踏ん張り時や」の擬人化に俳諧味がある。
(白石)
     
小西昭夫選
【特選】
 紅葉のトンネルの先工学部  松山市 石川祥子

【評】大学のキャンパスには樹木が多い。通路の両側に落葉樹が植えられて、
見事に紅葉のトンネルが出来ている。そのトンネルを抜けると工学部があ
るのだ。紅葉のトンネルという情緒的なものと工学部という硬質の学部の
出会いが詩になっている。「銀杏散るまつたゞ中に法科あり 山口青邨」
句がある。

【入選】
 海賊の海を見下ろす蜜柑山 松山市 長澤久仁子
【評】蜜柑山からかつて海賊たちが活躍した瀬戸内の海を見ているのだろう。蜜柑
摘みをしながら、自分の父祖は海賊だったかもと思ったかもしれない。自分が海賊
に変身して海を見下ろすという意味で「海賊の」と表現したのかもしれない。
それも魅力的だ。
   
白石司子選
【特選】
 烏瓜ここは東京歌舞伎町    松山市  辻原雅子
【評】楕円形で赤熟する「烏瓜」の実は、ネオンが煌びやかに輝く不夜城の「歌舞伎町」を想像させ、近称の指示代名詞「ここ」が、大都会東京の歓楽街に降り立った臨場感を生み効果的。また、夕方から花弁を開き朝にはしぼむ烏瓜の花が、花粉を媒介させる蛾の舞う姿を連想させ、一句を幽玄な趣あるものとしている。

【入選】
 何もかも思い出にする春の雨  松山市 金子寿次郎
 【評】人間として生まれたことによる喜怒哀楽は、生ある限り付いて回り、時とし
 て煩わしく感じることもある。しかし、一雨ごとに地を潤し、若芽を育てる柔らか
 い「春の雨」は、「何もかも」を洗い流して想い出にしてくれるのである。 
    
本郷和子選 
【特選】
 ふらここの鉄の哭く音寒波来る    松山市 大川忠男
【評】歳時記では「ふらここ」(ブランコ)は春の季語とあるが、本来、ブランコは
年中、子供の遊ぶ物としてあるものだ。ブランコにだれか乗っているのか、それとも
強い風にブランコが揺れてキイキイと鉄の音がしたのか、「鉄の哭く」がよい。ふら(・・ここ・・仮名の柔らかさと後に続く「鉄」と「寒波」の固さ厳しさの対比が巧み

【入選】
 よく遊ぶ仔犬や春を高く跳ぶ   松山市 上田雅子
【評】素直な句である。「犬」ではなく「仔犬」だからなお良い。仔犬の遊ぶ様子が
 想像できてかわいい。「高く跳ぶ」は実際に跳びはねて遊んでいるのだが、「春を
 高く跳ぶ」によって春の景が見えて、春が来た喜びを仔犬の動きとしてうまく表現
 できた。

髙橋正治選 
【特選】
 寡黙なる人の背にふる春の雪     松山市  岩崎美世
【評】雄弁には偽りが多く、静かな独語に真実がひそむ。信の心だけが地上に美しさ
を創る。偽装の美は風と共に消える。
【入選】
 何もかも思い出にする春の雨   松山市 金子寿次郎
【評】冬を忍んで迎え得たこころをしみじみと感じて生きていることの有難さ、静か
で柔らかい雨が草木を芽ぐむ、思い出の走馬灯に心を遊ばす。