コロナウイルスの関連で、一草庵で公開俳句大会を開催することはできませんでしたが、
465句(一般の部 351句、高校等の部 114句)の応募がありました。
俳句選者の先生と、俳句一草庵スタッフで各賞を選句させていただきました。
俳句一草庵大賞
未来図に九十のわれ雛飾る 松山市 岡田早苗
どんな年齢であれ未来はある。作者は90歳であるが未来図を持っているのだ。
「雛飾る」によってその穏やかな日々を迎え、まだまだ続く未来に希望を描いて
いる嬉しい一句である。(本郷)
「雛飾る」によってその穏やかな日々を迎え、まだまだ続く未来に希望を描いて
いる嬉しい一句である。(本郷)
松山市文化協会会長賞
蒲公英の青春はここわが母校 吉城高校 千田清高
①青春を謳歌した三年間のわが母校。中七の「青春はここ」と断定した母校で
ある。蒲公英の絮は将来の夢に向い飛んでいくのだ。蒲公英は作者であろう。(本郷)
②擬人化した蒲公英の青春がここわが母校にあるということと、作者の青春が
わが母校にあるという意味がかけられている。うらやましいような青春だ。(小西)
山頭火一浴一杯賞(水口酒造協賛)
春の月枕としたる山頭火 大洲市 板倉肱泉
宵の空に春の月が昇る。春の月を美しいと愛でる山頭火がいる。山頭火と一献交えたくなった。(高橋)
山頭火柿しぐれ賞(白石本舗協賛)
草萌や寺の隣の小さき庵 松山市 神野睦子
「寺の隣の小さき庵」は、山頭火が「おちついて死ねさうな草萌ゆる」と詠んだ
一草庵。そこには柿の木もある。(小西)
《小西昭夫選》
一般の部・特選
春風につけ込む隙をくれてやる 藤沢市 河本朋広
やわらかな上五の春風に、中七下五のつけ込む隙をくれてやるという乱暴な表
現が意表を突く。現状の何かへの作者の怒りが伝わってくる。
現が意表を突く。現状の何かへの作者の怒りが伝わってくる。
一般の部・入選
休校もコロナも知らず亀鳴くや 松山市 白川睦子
新型コロナウイルスは一向に収まる気配を見せない。実際には鳴かない「亀鳴
く」という季語を使って休校もコロナも嘘であってほしいという祈りが切ない。
く」という季語を使って休校もコロナも嘘であってほしいという祈りが切ない。
高校等の部・特選
口づけるやうに死にゆく春の蝶 松山西中等教育高校 岡崎唯
休校が続いているので、コロナ禍による社会的俳句という受け取り方もでき
る句だ。「ぐいと」のオノマトペが効果的で、北窓開けるという行為に学校に
行けぬ鬱屈感からの解放みたいなものを感じる。
高校の部・特選
高校の部・特選
口づけるやうに死にゆく春の蝶 松山西中等教育高校 岡崎唯
死にゆく蝶から口づけを連想し、春の季語である蝶をあえて春の蝶と詠んだ。
エロスとタナトスを詠んだ青春の過剰なエネルギーに脱帽する。
エロスとタナトスを詠んだ青春の過剰なエネルギーに脱帽する。
高校等の部・入選
蒲公英の青春はここわが母校 吉城高等学校 千田清高
擬人化した蒲公英の青春がここわが母校にあるということと、作者の青春が
わが母校にあるという意味がかけられている。うらやましいような青春だ。(小西)
《白石司子選》
一般の部・特選
初恋は初蝶の触覚の震え 松山市 越智敦子
「初」の繰り返しが初々しさを感じさせ、それが「触覚の震え」と上手く響
き合う。また、初恋イコール初蝶の触覚の震えであるという断定感もいい。
一般の部・入選
春ショール重き戸籍を脱ぎ捨てる 今治市 鈴鹿洋子
春ショール重き戸籍を脱ぎ捨てる 今治市 鈴鹿洋子
防寒用の冬物に比べ、明るく軽い「春ショール」。作者はそれをふんわりと
纏った時、自身の生の証ともいえる家庭関係などを記載した重い戸籍を脱ぎ
捨てたような感覚におそわれたのである。
纏った時、自身の生の証ともいえる家庭関係などを記載した重い戸籍を脱ぎ
捨てたような感覚におそわれたのである。
高校等の部・特選
ウイルスの名の神めくや種選 名古屋高校 篠原圭太
細胞に寄生して増殖するウイルス。「神めく」の言葉の斡旋、また季語「種選」
との取り合わせがダーウィンの「種の起源」を思わせる。種は選ばれ、変異後に
生き残るのはウイルスなのかもしれない。
との取り合わせがダーウィンの「種の起源」を思わせる。種は選ばれ、変異後に
生き残るのはウイルスなのかもしれない。
高校の部・入選
学校の見える北窓ぐいと開け 吉城学校 立道寛人
休校が続いているので、コロナ禍による社会的俳句という受け取り方もでき
る句だ。「ぐいと」のオノマトペが効果的で、北窓開けるという行為に学校に
行けぬ鬱屈感からの解放みたいなものを感じる。
《本郷和子選》
一般の部・特選
未来図に九十のわれ雛飾る 松山市 岡田早苗
どんな年齢であれ未来はある。作者は90歳であるが未来図を持っているのだ。
「雛飾る」によってその穏やかな日々を迎え、まだまだ続く未来に希望を描いて
いる嬉しい一句である。
どんな年齢であれ未来はある。作者は90歳であるが未来図を持っているのだ。
「雛飾る」によってその穏やかな日々を迎え、まだまだ続く未来に希望を描いて
いる嬉しい一句である。
一般の部・入選
散り終えて桜のびのび大あくび 宮城県登来市 佐々木陽子
満開の桜は次々と散り始め、すべて散り終えた時、桜の木は安息の時を迎え
る。やっと勤めを果たし、人間のように伸び伸びと大あくびをする。擬人化
の面白さがあり愉快だ。
る。やっと勤めを果たし、人間のように伸び伸びと大あくびをする。擬人化
の面白さがあり愉快だ。
高校の部・特選
蒲公英の青春はここわが母校 吉城高校 千田清高
青春を謳歌した三年間のわが母校。中七の「青春はここ」と断定した母校で
ある。蒲公英の絮は将来の夢に向い飛んでいくのだ。蒲公英は作者であろう。
ある。蒲公英の絮は将来の夢に向い飛んでいくのだ。蒲公英は作者であろう。
高校等の部・入選
石鹸玉の中へ碧空いれましょう 吉城高校 宮本明佳
しゃぼん玉に青空や、木や草、自分の顔が映るという句は多いが「入れまし
ょう」という口語の下五がやさしく生きている。
《髙橋正治選》
一般の部・特選
土の声聞いてぐんぐんチューリップ 八幡浜市 松下陽子
空が浅みどりに晴れて日の光がうららかである。春は土から湧いてくる。
大地はあたゝかいふところをひろげる。土は母なる大地だから。
土の声聞いてぐんぐんチューリップ 八幡浜市 松下陽子
空が浅みどりに晴れて日の光がうららかである。春は土から湧いてくる。
大地はあたゝかいふところをひろげる。土は母なる大地だから。
一般の部・入選
冬の星見上げる口が開いている 松山市 宇都宮駿介
見上げる星は一糸乱れぬ整然たる姿である。何という大神秘、凍てた大地に立ち
つくす。太古と今を一体として輝きつづける。
冬の星座は何といってもオリオン座。
見上げる星は一糸乱れぬ整然たる姿である。何という大神秘、凍てた大地に立ち
つくす。太古と今を一体として輝きつづける。
冬の星座は何といってもオリオン座。
高校の部・特選
枯野道次の角まで孤独なり 伯方高校 白石孝成
不安の影も時が立てば薄くなるが、分からなかったことがわかり、出来なかっ
たことが出来る。向かうとこには豊かさが待っている。腰骨を立て、胸をはって歩け歩け。
たことが出来る。向かうとこには豊かさが待っている。腰骨を立て、胸をはって歩け歩け。
高校等の部・入選
満開の桜背後に一人立ち 飛騨神岡高校 米澤祐輝
自分の顔に責任を持てば、知らず知らずの間にいい顔になる。うれしい時には
自分の顔に責任を持てば、知らず知らずの間にいい顔になる。うれしい時には
うれしい花が咲こうではないか。身心共に健やかに明るく生き抜いていこう。
《まつやま山頭火倶楽部賞》
一般の部・特選
たんぽぽのぽぽぽぽぽぽと一草庵 松山市 浅海好美
一草庵には、明るくたんぽぽの花が咲いてくれる。庭の入り口から母屋の方までぽつぽつと咲き続き、まるで客人を案内しているようだ。そしてやがて山頭火のように、絮毛となり風に乗って消えてゆく。
高校等の部・特選
春北斗観察記録の点つなぐ 水沢高校 高橋朱音
※4月29日、俳句大会が中止になったが、一草庵を覗いてみた。
女の子が、たんぽぽの絮を風にとばしていた。コロナウイルスもいない一草庵の長閑な
風景でした。
女の子が、たんぽぽの絮を風にとばしていた。コロナウイルスもいない一草庵の長閑な
風景でした。