今週の山頭火句

今週の山頭火句 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし 山頭火

2021年4月29日木曜日

『第16回俳句一草庵賞』を発表します。



 第16回俳句一草庵賞がきまりましたので、発表します。

コロナウイルスの関連で、一草庵で公開俳句大会を開催することはできませんでしたが、
一人限定2句で635句(一般の部 351句、高校等の部 114句)の応募投句がありました。俳句選者の先生と、俳句一草庵スタッフで各賞を決定させていただきました。
                    
                    

                 

俳句一草庵大賞

たましひのいつたりきたりしてうらら     松山市 大野フミエ
①「たましい」は亡くなった方のものとも自分のものとも読めるのだが、作者自身の魂
と読んだ。うららかな日差しの中、公園のベンチにでも腰かけているのだろうか。
作者は無防備に座っている。たましいはそんな作者を出ていき、また戻ってくる。
すべて平がなでの表記も効果的である。(小西)
⓶ 目に見えぬ「たましひ」であるが、「いつたりきたり」がまさに「うらら」。暖かく
心地よい春の中でたましひ遊びをしている作者像がみえてくる。(白石)
        
松山市文化協会会長賞
 
満開の花に飛び込むすべり台         松山市 長澤久仁子
 桜の高さと滑り台の高さとがピッタリとはまって、まるでジェットコースターにでも乗っているような臨場感を感じました。桜が満開の公園にある滑り台を滑る、という光景をここまで言葉を省略して言えるとは素晴らしい。(キム・チャンヒ)
 
山頭火一浴一杯賞(水口酒造協賛)

ひかりそうなくらい犬をなでる    三重県名張 宮崎紘陽
こんなに言葉少なに犬への愛情が伝わってくる俳句は、初めて読みました。
いつまでもなでている様子と、美しい犬の毛並みとが、両方見えてきました。
(キム・チャンヒ) 

山頭火柿しぐれ賞(白石本舗協賛)

まだ除染終わらぬ田畑に黄水仙      日浦小中学校 土居千紘
  まだなのか、と改めて思う。東北大震災の福島の原発事故を詠んだことは間違いないだろうが、胸が痛くなる。しかし、そこには黄水仙が咲いた。それがぼくたちの希望である。(小西)



《小西昭夫選》
一般の部・特選
たましひのいつたりきたりしてうらら   松山市 大野フミエ

 一般の部・入選
チューリップ赤い音して散りにけり       八幡浜市 松下陽子
 チューリップの花びらは静かに散る。そこに音を感じる感性に脱帽する。しかも、
チューリップは赤い音をして散るのだ。まいったなあ。言葉からの発想かもしれない
が、見事である。

高校等の部・特選

まだ除染終わらぬ田畑に黄水仙     日浦小中学校 土居千紘


高校等の部・入選

青い空紋白蝶を呑み込んだ                吉城高 柚原一穂

 青い空と白い蝶。色の対比がきれいだが、作者は紋白蝶を見失った。それを青い空 
 が紋白蝶を呑み込んだと表現した。呑み込んだという荒っぽい表現には青春期の不
 安が見事に書かれている。

《白石司子選》
一般の部・特選
きっとまた逢えるはずだよ飛花落花    大洲市 清水星凛
上五・中七は飛花落花に対する思いでもあり、コロナ禍で会えない人達に対する思いでもある。「きっとまた逢えるはずだよ」の口語が明るい。

一般の部・入選
たましひのいつたりきたりしてうらら 松山市 大野フミエ
  

高校等の部・特選
美しき花鳥風月花粉症      坂戸ろう学園 佐々木彩乃
自然の風物を楽しむ「花鳥風月」、また、虚子の俳句理念である「花鳥諷詠」。
美しく、普遍的と思われるものから、不快感を伴う下五への飛躍が、「明易や花鳥諷詠南無阿弥陀」を詠んだ虚子からすれば、まさに「花粉症」としか言いようのない秋櫻子や誓子の新興俳句運動をも思わせる。

 高校の部・入選  
菜の花や風と一緒にクラス替                吉城高 水上琴実 
目に見えず、次の瞬間には消える「風と一緒に」が、期待と不安の入り交じった
クラス替を想像させるが、上五の「菜の花」との取り合わせが一句を明るいもの
にしている。

《本郷和子選》
一般の部・特選
天に星地に犬ふぐり地動説            大分県国東市 吾亦紅
地球が太陽のまわりを巡るのだというコペルニクスの説が地動説である。
太陽の恩恵により地球は生きている。夜には宙に星がまたたき、春には犬ふぐりが
まるで星にように散りばめられて咲く。スケールの大きさから足元の小さな花に視
点を置き一句は完成している。

一般の部・入選
わだかまる心解きぬ春の月        松山市 西野周次
人はだれしも、わだかまる心を持つ時があっろう。秋の月は清(さや)けく、冬の月は冴え、春の月は朧である。春の月のあの優しくふんわりとおぼろなる美しさを見ているとわだかまりは次第に解(ほど)かれていくのだ。

高校の部・特選
 石鹸玉太陽の中暴れゆく          吉城高 加藤 凛
 しゃぼん玉を空へ向かって吹くと太陽の方へ飛んだ。大小何十というしゃぼん
 が一斉に飛んでゆく。それはまるで太陽の中を暴れてゆくようだととらえた。しゃ
 ぼん玉のかわいいイメージを一転させるおもしろい表現となった。

 高校等の部・入選
  うららかや何も聴かないヘッドフォン   松山東高 大空拓海
 春の日が輝き、明るくやわらかい日差の中、若者はベッドフォンをうけて歩いて
 いる。又は、ぼんやりと坐っているのか。そのヘッドフォンからは、何も聴こえな
 い、いや聴かないのである。作者は今、何より「うららか」に勝るものはないと思
 ってるのだろう。

《キム・チャンヒ 選》
一般の部・特選
ひかりそうなくらい犬をなでる     三重県名張 宮崎紘陽
こんなに言葉少なに犬への愛情が伝わってくる俳句は、初めて読みました。
いつまでもなでている様子と、美しい犬の毛並みとが、両方見えてきました。

一般の部・入選
満開の花に飛び込むすべり台     松山市 長澤久仁子
桜の高さと滑り台の高さとがピッタリとはまって、まるでジェットコースターにでも乗っているような臨場感を感じました。桜が満開の公園にある滑り台を滑る、という光景をここまで言葉を省略して言えるとは素晴らしい。

高校の部・特選
 やわらかきチョークの匂い春の風   今治西伯方分校 田頭京花
語順がいい。「やわらかきチョーク」までの不思議。続けて、やわらかいのは
「チョーク」ではなく、「チョークの匂い」であると分かり、はっとさせら
れました。下五の「春の風」が、この句の世界すべてを包み込み、読者を納得
させます。
 
 高校等の部・入選
  春風や保育士になると言い放つ                        吉城高 岩 愛子
 高浜虚子の「春風や闘志いだきて丘に立つ」のオマージュとして読みました。
強い意志を感じるけれど、自分の内側に向かって行っているようにも感じます.
しかし「春風や保育士になると言い放つ」は、荒っぽく外に向かって、自分の夢を宣言しているところが、とても現代的に感じられました。保育士という職業に対する敬意も感じられます。

《まつやま山頭火倶楽部賞》 
 残雪やスパイス匂うカレー店                水沢高 髙橋朱音 
春になっても雪はまだ山に残っている。眼前に、カレー店の爽やか辛さのスパイス
胸一杯に匂う、店は春満開ようだ。説明の言葉はないが、バックの残雪とス
パイスカレー店の取り合わせの景は大きい。言いおほせて何かある。

どうしても逆立ちしたきてるてるぼうず         飛騨神岡高 森下朋花
この句を読んだ時、なんてかわいい句だろうと思った。どうしても逆立ちしたきと は? 作者は、その日には雨がふってほしかったのだろうか。皆で作ったてるてる坊主を逆さ坊主にすることはできない。そんな気持ちが、かわいく溢れている。
あるいは、天気にしてと皆に期待されているてるてる坊主さん。でも期待にそえないかもしれないと思うてるてる坊主の心の声が聞こえてきたのだろうか。逆立ちしたくなったてるれる坊主の気持ちを、肌で感じているあなたの優しさに拍手します。

    春菊と回覧板の置かれたる                愛光高 荒木咲良
 春菊の旬は、十一月から三月。冬の鍋料理に春菊は欠かせない。だけど春に菊に似た花を咲かせる、春菊って美しい名前ですね。冬の食用だけど春の香りがする。春菊と回覧板のシンプルな取り合わせが面白い。回覧板には春菊のことは何も書かれていなはずだが、早く春菊の香りと苦みを早く味わってくださいという声が聞こえてきた。

時流れ人影も行きただ枯れ木      台湾致理科技大學  羅仁慶

俳句は今を詠む、今を捉えるとよく言われる。時の経過を詠むのが難しいからだ。作者は黙って眼前の時の流れをみているのだが・・・。“ただ”の言葉に作者の想いと詩情が溢れている。

今日29日に、公開俳句大会「俳句一草庵」は、開催できませんでしたが、

一草庵へ行き、山頭火さんに報告させていただきました。

愛媛CATVさんが、取材に来てました、ニュースで流してくれるそうです。


インターネットで「youtube 俳句一草庵」を検索すると、
その俳句賞決定の映像が閲覧できます。