第32回山頭火俳句ポスト賞を発表します。
(投句期間 令和3年3月1日~8月31日)
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、212句。
表彰式は、10月3日(日)13:00~13:30
「山頭火・朱鱗洞句碑除幕式」会場で実施します。
会場 愛媛県護国神社万葉苑西(松山市御幸1丁目476)
山頭火俳句ポスト大賞
秋澄むや斜塔の如く立つ麒麟 松山市 西野周次
【評】キリンの立っている様を斜塔のようにと詠んだ。確かにキリンの首は長くこれほど背の高い動物は他にない。
背景の秋空とキリンの首が美しくその景が見えるようだ。
「如く」俳句を好まぬ人も多いが、例えば中七と下五を「麒麟の首は斜塔なる」としてはどうだろう。(本郷)
山頭火一浴一杯賞
団栗を句碑に供えて山翁忌 松山市 西 敏秋
【評】団栗とは一草庵の恩人どんぐり先生の愛称でもある、人格の味にひかれた 山頭火柿しぐれ賞
小西昭夫選
山翁、お豆腐の味、二人の味が相会って相語るのであるから話は変っていてゆかいなものであったろう。(髙橋)
冷し酒今年も届く明太子 松山市 河村 章
【評】いかにもお酒がお好きなことが分かる句である。飲んでたら明太子が
届いたのか、明太子が届いたから飲み始めたのか。毎年届く友からの明太
子である。友は作者のことをよく知っているのだろう。
酒もいいけど甘い柿しぐれもいいですよ。(小西)
【特選】蝉時雨の中一人シャッターを切る 藤沢市 前島大樹
【評】芭蕉の句ではないが、この句からは蝉時雨の騒がしさの中の閑けさを感
じる。蝉時雨の音しかないのだ。あとは一心不乱に切るシャッター音のみ。
被写体は分からないが自然と人間の対比が鮮やかである。
【入選】初デート少し残したアイスティー 松山市 宮田壽明
【評】ひやー、初々しいなあ。思い出の句だろうか、それとも若い人のリア
ルタイムの句だろうか。初デートで少し緊張している。だから、アイスティーも飲み切れなかったのだろうか。それとも「少し残した方がいい」という誰かのアドバイスだったのだろうか。アイスティーがオシャレ。
白石司子選
【特選】運慶の肉叢刻む雲の峰 松山市 小坂三国
【評】むくむくと湧きのぼる巨大な塔や山のかたちをした雲の峰に触発され、東大寺南大門の金剛力士像に代表される運慶の重量感ある力強い彫刻を思ったという二物衝撃句。
「肉叢(ししむら)刻む」がこの句の眼目である。
【入選】カレンダー捲れば一気に夏の海 松山市 亀井紀子
【評】原因・理由を示す助詞「ば」が、一句を理屈っぽくする場合もあるが、この句が成功しているのは、副詞「一気に」の斡旋、また、「夏」ではなく、「夏の海」への飛躍によるもの。キラキラ輝く夏の海が、まさに一気に眼前に広がってくるようだ。
本郷和子選
【特選】海原の底からサーファー現れぬ 松山市 田村七重
【評】東京オリンピックでTVのウインドサーフィンを見た。
大きくうねる波が立ち上がる時、サーファーは息を呑むように豪快に波の上に現れる。
「海底の底から」という表現に心打たれた。
【入選】歳やけんもう逆らわん猫じゃらし 松山市 八木重明
【評】この伊予弁にたとえようもなく惹かれる。又、この句の内容が良い。
猫じゃらしの風のまま揺れる様子は、物事に逆らわない有りのまま自然のままに生きる姿にも重なるのだ。この句は私自身納得の句である。