<<第33回山頭火俳句ポスト賞>>
(投句期間 令和3年9月1日~令和4年2月28日)
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、138句。
(コロナ禍に関係か、県外句は8句)
表彰式は、4月29日(祝)13:00~13:30
公開俳句大会「俳句一草庵」会場で実施します。
会場 一草庵(松山市御幸1丁目476)
山頭火俳句ポスト大賞
山笑う山から山頭火下りて来た 松山市 浅海好美
【評】「山笑う」明るい春となり、山から下りて来たのは小僧ではなく山好き な山頭火さん。「山笑う」「山」「山頭火」の「山」の繰り返しがリズムを生 み、童謡「おおさむこさむ(大寒小寒)」を思い出した。(白石)
浜焚火大風呂敷の輪に入りぬ 松山市 西野周次
【評】浜の焚火を男たちが何人かで囲んでいる。皆それぞれに愉快な会話が
弾んでいるのだろう。「大風呂敷」であるからいろいろと想像するのも楽しい。
作者もその輪の中に入り笑いながら合槌を打っているのか、ご自分も負けずに
大風呂敷を広げているのか、季語を生かしたおもしろい一句となった。(本郷)
一草庵寝転んで見る萩薄 松山市 西 敏秋
【評】日本の秋、いろいろの草花を見出すが、その中で、はっきり秋の景色
を謂えてくれるのは、萩とススキである。日本の秋を象徴し代表するのである。
ちなみに、「萩がすすきが今日の道 山頭火」の句がある。(髙橋)
【特選】笑う山笑わぬ山も肩ならべ 八幡浜市 後藤明弘
【評】俳句の世界では冬の山は「山眠る」、春の山は「山笑う」という。
冬の山は木々の芽吹きの準備などで何となくざわざわしてくる。
これが「山笑う」ということだが、冬から春への季節の変わり目には笑う
山と眠る山が肩を並べているというのだ。機知の句ではあるが、季節の移
り変わる感じを上手く表現している。
【入選】しあわせを手押しポンプに汲む春日 松山市 長澤久仁子
【評】「手押しポンプ」がいいなあ。水道をひねって汲む水とは違って、
手押しポンプには水を汲むための能動的なかかわりがある。それは手押し
ポンプを押すことだが、蛇口を捻るのではないかわりに汲んだ水や汲む人
に射す春日がしあわせを実感させるのであろう。
白石司子選
【特選】整列のロシア兵墓地鳥雲に 松山市 長澤久仁子
【評】春、北方に帰ってゆく鳥の姿が雲間に隠れるさまをいう季語「鳥雲に」
が効果的。もちろん整列しているのは墓地であるが、そこに眠るロシア兵たち
が列を調えて鳥を見送っているようでもあるし、兵たちのたましいも一緒に帰
ることが出来ればいいと祈っているような作者の心象もみえてくる。
【入選】人生の意味を辞書で引こうとした 京都市 植木暮四
【評】物事を調べるには様々な情報が氾濫しているインターネットよりも、やは
り辞書が一番確実だと思って「人生の意味」を調べようとしたのであるが、
やめてしまったのかもしれない。生きる意味の答えは本当に難しい。無季句で
あるが多くを語っているし、「引こうとした」という口語が一句を深刻なもの
にしていない。
本郷和子選
【特選】身に入むや人にもありぬ裏表 松山市 西野周次
【評】「身に入む」とは晩秋の季語になるが、元来、和歌に愛用された言葉で
「哀れ」を主調として用いていたが、俳諧では感覚的に感じ取って「冷気」を主
にして言う。秋冷の気を身にしみ通るように感じること。人には裏表があるこ
とが冷気のようにしみ通るのだ。
【入選】冬うららトーテムポールに野球帽 松山市 青井真須美
【評】発見の句である。トーテムポールの上に野球帽が投げてひっかかったのか、
又は、わざと乗せているのか。意外性のある情景を句にしている。冬晴れのうら
らかな日のんびりと歩いて、この景を見つけた作者の何気ない写生の句である。
髙橋正治選
【特選】客用のカップで紅茶ひとり楽しむ 松山市 岡田道子
【評】お客様を送り出してより後はガランとして閑かである。一人縁側に出て、
もう一度藤の花を仰いだ。もう薄紫に咲き揃っているその美しさ、お客になっ
た気分で紅茶をいただいた、そんな景が見えてきた。
【入選】新そばを二人ですする二人の秋 松山市 長井道子
【評】そばを食べる時は、少し早目にざあざあと音を立て遠慮なく食べるのが
うまい。鼻や舌に残るあと味もよい。旅行の駅で僅かな時間で立ち食いするの
もうまい。
まつやま山頭火倶楽部賞
えんがわにもみじたなびく十二時半 勝山中学 植木晴子
【評】「誕生日午前十時の桐の花(川崎展宏)」の句を思い出した。
「十二時半」の言葉に発信力があります。午前九時でなく一六時でなくて。
一草庵にも縁側がありますが、縁側は家族や友人の集う憩いの場です。
食後のお茶を飲み終わったところでしょうか。「もみじたなびく」、
たなびくの言葉に動きがあっていいですね。これからの午後に新しい夢と
活力を感じました。