第17回俳句一草庵賞がきまりましたので、発表します。
コロナウイルス感染防止の関連で、一草庵で公開俳句大会を開催することはできませんでしたが、一人限定2句で486句応募投句がありました。俳句選者の先生と、俳句一草庵スタッフで各賞を決定させていただきました。俳句一草庵大賞
さむい駅から春に着いた 三重県名張市 宮崎紘陽
①「さむい駅」は冬の比喩。寒い冬がようやく終わり春が来た喜びと安堵感に溢れている。さあ、頑張るぞといった意欲も感じられる。この句が自由律であることも一草庵の句会ライブに相応しい。(小西)
⓶ 全体で十三音の破調であるが、これ以上言葉を付け足すと蛇足となってしまいそうだ。厳しい寒さから解放された明るさが伝わってくる。(白石)
松山市文化協会会長賞
永き日の壊れはじめる僕の空 今治西伯方分校 松本虹輝
①揺れる青年期の思いが上手く書き止められている。学校の成績でもいいしロシアのウク ライナ侵攻でもいい。理想と現実とのギャップがナイーブな心を揺さぶる。永き日のアンニュイがその気分を加速する。(小西)
①揺れる青年期の思いが上手く書き止められている。学校の成績でもいいしロシアのウク ライナ侵攻でもいい。理想と現実とのギャップがナイーブな心を揺さぶる。永き日のアンニュイがその気分を加速する。(小西)
⓶未来に不安を感じる青春性に惹かれた。季語「永き日」と「壊れはじめる僕の空」とが対照的で面白い。アンニュイな「永き日」。(キム)
山頭火一浴一杯賞(水口酒造協賛)
月光を招き入れこんな地球になったと詫びる
新潟県妙高市 国見修二
これも自由律だがこちらは長律。山頭火、放哉以降自由律は短律が中心になっていくが、長律の面白さを感じさせてくれる句。時節柄、「こんな地球」はウクライナの紛争を思うが、別の読みもあるだろう。(小西)
山頭火柿しぐれ賞(白石本舗協賛)
青き踏むいつも隣に山頭火 松山市 西野周次
恐らく「分け入つても分け入つても青い山」をモチーフに、この作者ならではの俳句に仕上がっている。山頭火への親愛の情を清々しく詠まれている。(キム)
《小西昭夫選》
一般の部・特選
さむい駅から春に着いた 三重県名張市 宮崎紘陽
一般の部・入選
月光を招き入れこんな地球になったと詫びる
新潟県妙高市 国見修二
高校等の部・特選
永き日の壊れはじめる僕の空 今治西伯方分校 松本虹輝
高校等の部・入選
雪解水オオイヌノフグリ照らしたり
高山市東山中学 門前逢希
ぼくたちがイヌフグリと呼んでいるのはほとんどがオオイヌノフグリである。
その名称へのこだわりが青年期の潔癖さを感じさせる。キラキラひかる雪解水に輝くオ
オイヌノフグリが美しい。
《白石司子選》
一般の部・特選
さむい駅から春に着いた 三重県名張市 宮崎紘陽
一般の部・入選
良い子から夏の子になる夏休み 宇都宮市 亀田かつおぶし
助詞「から」を「起点」と取るか、「経由点」と取るかによって解釈は異なるが
「夏の子」「夏休み」の繰り返しが「夏」の解放感を表出。最近の子どもたちは、
夏休みでも部活、塾通いで忙しいが、かつてはこんな元気な子が多かった。
高校等の部・特選
春光やピアノのペタル踏むリズム 水沢高校 菊地真帆
二物配合の句であるが、即かず離れずでうまい! 春めいた光線に、表現の可能性が広がるピアノのペダルを踏むリズムを感じたのである。
高校の部・入選
葱坊主失恋しつこいと読み 吉城高校 吉井幸平 うららかな春を思わせる葱坊主に触発された句だと思うが、それは作者自身の投影でもある。失恋の心の痛みのぐずぐずしたしつこさに少しうんざりして、すっと立つ葱坊主をうらやましく、いや、まだまだ坊主で未熟だなと考えたのかもしれない。
《本郷和子選》
一般の部・特選
菜の花と空の青さやウクライナ 松山市 水野玄太郎
菜の花の黄色と空の青色がウクライナのカラーである。現在のウクライナの状況を思うと作者は一日も早く元の平和な国に戻って欲しいと願っているのだ。句の裏に今の悲しみと祈りが内蔵されている。
一般の部・入選
反戦の叫びをさらう春一番 松山市 三好眞由美
この句も同じように世界の人々の心の叫びがある。その叫びを春一番がさらってしまうというのだ。でも、叫びを止めるわけにはいかない。いつまでも声をあげ叫び続けなければと思う。
高校の部・特選
水温む「おかあさん」から「母さん」へ
水沢高校 阿部なつみ
ひらがなの「おかあさん」から漢字の入る「母さん」へ十代の少年か少女が、
次第に成長する過程を切り取った初々しい句である。季語も適切だ。
高校等の部・入選
桜散る心機一転歩み出す 吉城高校 田中豊人
桜散る頃、卒業、入学期となる。作者は今までの自分を振り返ると共に「さあ出発
だ、がんばろう」と気持ちを新たにし前へと歩み出したのだろう。中七の言葉が一
つの決意となった。
《キム・チャンヒ 選》
一般の部・特選
木漏れ日ひとつ部屋の片隅 東京都 桐山榮壽
特別なことではなにもなく、ただ日常の一場面を切りとっただけなのに、自由律的な七七のリズムによって孤独感の様なものが伝わってくる。木洩れ日も自分も部屋の片隅にいるみたい。
一般の部・入選
青き踏むいつも隣に山頭火 松山市 西野周次
高校等の部・特選
永き日の壊れはじめる僕の空 今治西伯方分校 松本虹輝
高校等の部・入選
少年のふくらはぎより日脚伸ぶ 今治西伯方分校 阿部啓将
元気な少年は、春先(冬でも?)から半ズボンをはいている。そんな少年のふくらはぎが、春の光に浮かび上がっている映像がしっかりと見える。「より」の使い方もユニーク。少年のふくらはぎから、日脚が延びているようにも読める。
《まつやま山頭火倶楽部賞》
ウェディングブーケ遠くに春の雲 飛騨神岡高校 井上実咲
花嫁さんのブーケが空を舞う。その空の向こうの春の雲、ういういしい貴女に向かってやってきているような気がします。「ウェディングブーケ」と「遠くに春の雲」の見事な取合せに清々しい詩(ポエジー)を感じました。