今週の山頭火句

今週の山頭火句 二の丸三の丸さくらもみづりはじめて  山頭火

2010年11月13日土曜日

『第3回山頭火俳句ポスト賞』決定。

投句期間 22年7月1日~10月31日

一草庵「山頭火俳句ポスト」に投句された148句(内、県外句は38句。北海道、福島、東京、愛知、
大阪、和歌山、長崎等からの来庵者投句あり。各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。県外者から3句がえらばれました。
11月23日「一草庵」にて表彰。


山頭火俳句ポスト賞(秋季)
 山頭火なして酒飲む前に生柿食わなかったか    松山 田中清子

(評)柿は肝機能を高め二日酔いや悪酔いの防止に効果があることが知られている。
柿に含まれるタンニンが二日酔いのもとになるアセトアルデヒドと反応して排出をうながすのだという。
「なして」というのは南予地方の方言だろうか。口語のリズム
が心地よい。「なして」に呼応した「生柿」の音もいい。 (小西選)

小西昭夫・選
【特選】 秋風や足湯の足のすぐ乾く       長崎佐世保市 谷口和子

(評)足湯は温泉地の楽しみの一つだが、秋風の中では濡れた足もすぐに乾く。特に秋も深まってくると、
そのことに一抹の寂しさも感じる。「秋風」「足湯」「足」のリズムがいい分、余計に。

【入選】 ほろほろと昔ばなし語りて草庵曼珠沙華咲く   松山 安平賢三

(評)今回のポストは長律の句に面白いものが多かった。この句も短律で「ほろほろと曼珠沙華咲く」とか
「昔ばなし語りて曼珠沙華咲く」とすれば、あまり面白くない。この句が面白いのは長律だから。
短律で書いて山頭火や放哉の模倣を避けるのは本当に難しい。

白石司子・選
【特選】 彼岸花ここから先はひとり旅       松山 玉井淳子

(評)一草庵の庭に咲いていた彼岸花だろうか。漂泊の俳人山頭火の足跡を訪ね、
やっと辿り着いた終焉の地一草庵。そういったひとつの目的を達成した作者にとって、
ここ(一草庵)から先は本当のひとり旅が始まるのである。
「曼珠沙華」でなく、和名「彼岸花」としたことが、「此岸」と対極にある「彼岸」、
即ち作者自身の悟りの世界みたいなものさえもうかがわせる。

【入選】 山頭火不在のポスト秋の風       大阪府堺市  辻田智子

(評)秋風にひょうひょうと誘われて一草庵から再び行乞流転の旅に出た山頭火。
そして不在の空白をしっかり守るかのように無言で立つ「山頭火俳句ポスト」。
山頭火はまたひょっこりと戻ってくるかもしれない。ふと、そんな思いにさせるのは
「秋の風」を配したことによるものなのかもしれない。季語のもつ本意本情をうまく活用した句だ。       

高橋正治・選
【特選】 萩には触れず帰る     松山 伊藤海子

(評)それがよい、その内に路辺の土に鎮まる。季節の沈黙が濃厚に満たしてくれるから。

【入選】 あの雲に夢を貰った    松山 堀口路傍

(評)よろこびをもって人に接すると奇蹟は起こる。大空をゆく雲に夢は映っている。
朝夕の彩りに光る雲に希望をも見つけている、健全なる夢に祝福しよう。

本郷和子・選
【特選】 過去未来曼珠沙華曼珠沙華       松山 浅海好美

(評)漢字ばかりの句であるが、音読するとまるでお経のようなリズムになる。
曼珠沙華を繰り返すことで過去から未来へと続く時間や、空間を感じることができる。
深く読めば、宗教観、死生観をも内臓している。

【入選】 彼岸花ここから先はひとり旅        松山  玉井淳子

(評)一見、平凡、単純な句と思えるが、「ここから先」は、作者の通る道、あるいは人生であろう。
季語の彼岸花が、この句に生きてくる。山頭火は生涯ひとり旅であった。
一草庵で詠む句にふさわしい。

熊野伸二・選
【特選】 やっとあんたと会えた酒が酔わせる   大阪府堺市 中島学
 
(評)「一草庵」だから、必然的に「山頭火」が念頭にある。一草庵を訪ねた作者は、
そこに山頭火の存在を実感し、巡り会えた安堵の酒に陶酔すると読める。同時に、放浪
時代の山頭火の心境を代弁してもいる。彼のいう「あんた」は緑平か澄太か或いは墓と
なった朱鱗洞か、放哉か。しみじみの酒だ。

【入選】 一村の風の白さや蕎麦の花        松山  三好真由美

(評)鄙びた集落を吹き抜ける風は白=無色で、夏から秋への交替期である。
蕎麦は痩せ地や焼畑で栽培される。豊饒の沃野とは違った山峡の村の原風景か、見事に詠まれた。

<受賞者の言葉>
<辻田智子さん>
 10月18日「朝日俳壇選者(稲畑汀子・金子兜太・長谷川櫂・大串章)とともに」
ツアー旅行で、松山へ来た時に一草庵を訪れて作った句です。
初めての一人旅、入選したことが大変励みになります。

<谷口和子さん>
10月14、15日「狩」鷹羽狩行主宰の傘寿記念俳句大会に参加して、
みんなで一草庵へいこうということとなりました。
一草庵ではすぐにできなかったので、道後で詠んだ句を投句しました、大変うれしいことです。
俳句大会では、一草庵での句「一草庵鉄鉢色の椿の実」が何人かの特選となりましたよ。


<中島学さん>(大阪堺市から表彰式へ参加)
この句は20代ごろの作品です。
選者の熊野先生がご指摘のように、山頭火か放哉にやっと会えたという嬉しさでつくったものです。
今回は妻と二人で初めて一草庵を訪れました。バスの時間が迫っており
ゆっくりできなかったのですが、よく思い出す自慢の句を投句させていただいた次第です。
今年になって、元旦から一日一句以上と決めて定型の生活句を作り続けております。
今日で593句になりました。今回、この素晴らしい賞を受賞できたことにより、
今後一層の励みとなります。山頭火と松山、そして俳句は私にとってこれまで以上に身近で
大切な存在となりました。