今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2014年2月20日木曜日

『第12回山頭火俳句ポスト賞』の掲載。

ずっとずっと、ホームページの更新ができていませんでした。


一草庵では、いま一枝の紅梅が満開です。


昨年の出来事ですが、掲載させていただきます。
『第12回山頭火俳句ポスト賞」の紹介です。
表彰式は25年11月23日に行いました。

 一草庵の「山頭火俳句ポスト」に全国からの訪問者

から俳句が124句、投句されていました。
(内、県外句の数は38句)
北海道札幌市、東京都杉並区・足立区・目黒区、
東京都八王子市、横浜市、埼玉県北本市、岡山県赤磐市・神戸市、高松市、長崎市など全国各地、台湾からの句の中より、各選者の先生に優秀句を選んでいただき
ました。



『第12回山頭火俳句ポスト賞』の報告です。
(投句期間 25月1日~1031日)
       
山頭火俳句ポスト賞

まっこと山頭火逝きし草庵柿赤し 松山市 安平賢三

(評)「まこと」ではなく、「まっこと」の切り口が、作者の思いを遺憾無く伝達。
もちろん山頭火が「逝きし」ことは作者自身にはわかっているのだが、終焉の地「一草庵」を訪れた時、「もう、山頭火はいないのだなあ」という気持ちを一層強くしたのである。そして、下五「柿赤し」がその印象を強烈なものとさせている。
(白石評)


山頭火柿しぐれ賞

柿したたる鳥のくちばし光る    松山市 太田和博

(評)熟した柿の実がぽたぽたとしたたるのである。鳥はその実をつついたのか、
くちばしが濡れて光っているのだろう。定型句でなく自由律である。
本来「滴り」は夏の季語であるが、この句は水滴でなく、柿の実のしたたりである
から異存はない。「したたりて」でなく、「したたる」と断定し、又「光る」と終結し、その<る>と<る>が快いリズムとなっている。初めての「柿しぐれ賞」にふさわしい秀句と思う。(本郷評)

 ※ 昨年の10月11日、山頭火の命日「一草忌」に、
 山頭火の句「しぐれて柿の葉のいよいようつくしく」に因んで、
 山頭火の和菓子「柿しぐれ」ができました。
 それを記念しての「山頭火柿しぐれ賞」です。
  
さて、銘菓「柿しぐれ」を持っているのは、誰でしょう

小西昭夫・選

【特選】まだまだと一草庵の青い柿  松山市 太田和博

(評)何かしているときに、「もういいか」と思うことはよくある。
しかし、それを諾えば物事はそこで終りである。「まだまだ」という
のは柿の熟れ具合でもあるし、自分へのエールでもある。
「一草庵」と「青い柿」の取り合わせが決まっている。


【入選】山頭火居士の位牌の涼しさよ 岡山県赤磐市 杉生征之進

(評)山頭火の位牌は本当に小さい。小さな位牌のつつましさと「山頭火居士」のみ
のシンプルさが涼しさを運んでくれる。
位牌の山頭火には、もはや煩悩に苦しまなくてよい涼しさがある。

白石司子・選

【特選】流水に秋思のありて留まらず   松山市 西野周次

(評)人それぞれに物思いにふける秋であるが、この句では「流水」に「秋思」を抱いたのが発見。まさに人生は流れる水の如し。生きていればいろいろとあるが、「留まらず」にいるからこそ、それぞれに揺れ動くと考えれば、少しは気持ちが楽になる。

【入選】行く秋や形のきれいな耳をもち 松山市 浅海好美

(評)上五「行く秋や」で切れているが、終止形「もつ」ではなく、「もち」と連用形止としたことで上五へ遡行。立ち去ろうとしている「秋」と中七・下五が妙に響き合い、「形のきれいな耳」だけが取り残されたような印象深い句となっている。

本郷和子・選

【特選】ベッドまで届く名月掌に受ける 松山市 柳瀬文雄

(評)作者は窓際のベッドに寝ているのだろうか。
ガラス窓を通して、名月の光は部屋の中まで届いているのだ。なんと美しい月光、
それを掌に受けるという行為。それは、感動するほどの情景である。
独り静かに無音の時を過ごし、澄み切った秋の空の空気までも伝わってくる。

【入選】醤油屋の猫あくびする冬隣    松山市 太田和博

評)いよいよ冬がそこにきているという頃の吟行句であろうか。
古町の醤油屋の前の陽だまりで、猫がのんびりと通る人を眺めているのだろう。
少し眠たくなったのかあくびをしている猫の姿がおもしろい。
冬隣の季語が効果的。「パン屋の猫」「魚屋の猫」ではなく「醤油屋の猫」がよい。
一句からほのかに醤油の香りまで漂う。

熊野伸二・選

【特選】流鏑馬の秋天心を射抜きたる   松山市 西野周次

(評)流鏑馬(やぶさめ)は、馳せる馬上から矢継ぎ早に弓矢を射る練習として、平安・鎌倉時代の武士間で盛んに行われたという。現在も、祭りなどに行う所がある。古武士の衣装に身を包んだ馬上の射手が放った矢が、的の板に命中し、真っ二つに割れる瞬間は、晴れた秋空の真ん中を射抜いたような爽快感を催すという句意である。

【入選】麒麟行く後姿や天高し         松山市 中本静枝


(評)現存する動物の中で、最も首が長く、背の高いキリンが、ゆったりと歩いて行く。その上に広がる真っ青な秋空。悠揚迫らざる大型動物・キリンの動きを見ていると、あくせくする人間の所業が愚かしくさえ思えてくる。そこが、動物生態の観察場所であると同時に、癒しの空間たる動物園の存在価値でもあろう。


  一草庵の「山頭火俳句ポスト」 11月~2月分の投句の
 締切りは、2月28日です。
  一草庵へお立ち寄りの際は、是非一句投句を。

 第9回の俳句一草庵は、平成26年4月29日に開催しましす。