(投句期間は、27年3月1日~6月30日)
表彰式は、8月9日(日)に一草庵夏の子どもまつり会場で。
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は162句。
(一般137句、児童25句 内、県外句40 東京猪江市、町田市、国立市、江戸川区、国分寺市、茨木市、茨木県小美玉市、埼玉県深谷市、川口市、神奈川県相模原市、豊橋市、札幌市、山形県天童市、山形市、富山県小矢部市、千葉市、松戸市、愛知県西尾市、山梨県甲府市、東大阪市、岡山市、兵庫県須磨市、山口県周南市、アメリカ等)よりの投句の中より、各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。)
山頭火俳句ポスト賞
酔うて月の中に寝る 松山市 堀口路傍
【評】山頭火の句に「酔うてこうろぎと寝てゐたよ」という句があり、それを少し拝借したような自由律である。
月のきれいな夜、月を見ながら酔ったままいい気分で寝ているのだろう。
「酔いし我月の光を浴びて寝る」こう詠めば無難であるが少しもおもしろくない。
「月の中に寝る」この短さは、この句に想像性と広がりを与えた。(本郷)
山頭火柿しぐれ賞
春愁や砂のつまりし二枚貝 松山市 武智敦子
【評】我が国では、古くから春の大潮のころ、海辺で魚介や海藻を採取して煮炊きし、食膳に供して楽しむ「磯遊び」の風習がある。そんな時でもあろうか、アサリやハマグリのような二枚貝を手にしたが、開いてみると砂が詰まった死貝だった。裏切られた気分は、何とはない春の憂いをさらに深める一瞬となる。(熊野)
小西昭夫・選
【特選】下萌という羊水の息づかい 松山市 今岡美喜子
【評】羊水の中では新しい生命の息づきが始まっているが、
大地の下萌もこれから盛んになる生命の先駆け。羊水
と下萌の類似の発見が輝いている。
【入選】息をする死 松山市 玉野若紫
【評】生きているとは心身ともに健やかであることだろう。
たとえ肉体は元気でも心を失えば、もはや生きているとは言えないというのだ。ドキッとする句である。
白石司子・選
【特選】子規百句手に発心の五月旅 松山市 岩崎美世
【評】瑞々しい若葉に包まれ、生命力溢れる五月だからこそ、発心の旅に出るのもいい!それも「子規百句」を手にして! 我々俳人にとっての原点といえば、やはり正岡子規。俳諧の発句を俳句とした子規を知らずして俳句は語れなの
である。
【入選】 囀や草庵寂と静もれる 東京都町田市 笠原祥郎
【評】春の明るさ、おおらかさを実感させる「囀」であるが、山頭火の眠る庵は、ひっそりと静まりかえっている。生の象徴
でもある賑やかな鳥の鳴き声が、主なき草庵の寂漠感を際立たせる。
本郷和子・選
【特選】のうぜん花護先生今いずこ 松山市 岩崎美世
【評】山頭火研究の第一人者であっただけに、一草庵や山頭火、と言えば
村上護氏と、誰もが思う。作者は、のうぜん花の咲く頃、天へ旅立たれた護先生のことを心から偲んでいるのだ。
花の鮮やかな色に、護先生の文学への情熱が秘められ、伸びる蔓は天の先生の元に届くかも知れない
【入選】踊子草佳境に入らば舞ひ初むる 松山市 西野周次
【評】踊り子草は、人が笠を着て踊るのに似ているので、この名がある。
「佳境に入れば」というので、踊り子草を擬人化し、いよいよ、その時が来れば、舞い始めるのだろうという空想
のポエムがある。俳句は、写生から一歩踏み出すことも楽しい。
熊野伸二・選
【特選】秘めごとは蛍袋の中に閉づ 松山市 今岡美喜子
【評】「ホタルブクロ」の名前は、釣鐘型の袋のような花に、ホタルを入れて遊んだのが命名の由来とか。
直径2,3㌢、長さ7,8㌢の花だから、閉じ込める秘め事は、ほんの小さなものかもしれない。
山野にさりげなく咲く花の素朴さと、秘め事をその花に託そうという作者の純情が響きあっている。
【入選】余花の雨一夜かぎりの遍路宿 茨城県小美玉市 吉原喜枝子
【評】立夏の後、若葉の中に咲き残っている桜の花、即ち余花が、雨に濡れている。遍路もまた雨に降られ、その日の行程を早目に切り上げて投宿する。どこに行き倒れても良いとの覚悟で、死装束の白衣を身に付けた遍路にとっては、全てが一期一会。この宿も再び止まることのない一夜限りーの感懐。
一草庵児童賞
ゆきだるま手足は木のぼうのっぺらぼう 松山市 永野華月
【評】雪だるまを作って、手足は木の棒で作ったが、顔は
作らなかったのだろうか。「頭かくして尻隠さず」と
いう可笑しさがある。「木の棒」「のっぺらぼう」の畳
みかけるリズムも楽しい。(小西)
ひこばえや折り紙みたいな空の色 松山市 岡崎 唯
【評】この句は、いつも当たり前のように見ている空を、「折り紙みたいな」色と捉えたところがすごい!
そんなきれいな色の空だったら、君も、ひこばえもぐんぐん空に向かって成長していくね!(白石)