今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2017年8月28日月曜日

『第7回一草庵・夏のこどもまつり俳句賞』の紹介


『第7回一草庵・夏の子どもまつり俳句賞』
<平成29年8月5日>
                                 

                                         
小西昭夫・選

【特選】 ゆかた着ておとなになった私かな        湯築小年6年   玉井菜々美
いいなあ、こうやって少女は大人になるのだが、少女の側にもその自覚がある
事を教えてもらった。「君は静かに音も立てずに大人になった」という井上陽水
の歌詞が重なってくる。
【入選】 ばったはあしがすごい                清水小1年   朝日悠介
確かに、ばったはあしがすごい。あの跳躍力はあの足から生まれるのだ。山頭火
を顕彰する一草庵にふさわしい自由律の句である。
【入選】 夏の空太陽長く月短く                 姫山小3年   杉浦悠仁
短夜という夏の日の素朴な観察がすごい。太陽の時間は長く月の時間は短いのだ。
早い話が昼は長く夜が短いのが夏。それを自分のことばで表現したのがすごい。
【佳作】 お父さんしゅく題見てって言ったやろ      清水小3年   横山真由
お父さんはテレビを見ているのかお酒を飲んでいるのか。真由ちゃんの宿題を見
てくれない。真由ちゃんの怒りは限界に来ている。おかしい。
【佳作】 夜の空いつもとちがう天の川             姫山小3年  門屋旭希
七夕の夜だ。その夜空がいつもとちがうと感じる感性がすごい。松尾芭蕉にも
「文月や六日も常の世には似ず」の句がある。旭希くんは現代の芭蕉だ。


白石司子・選

【特選】 かきごおりヒヤッとあまくてゆうひいろ    湯築小1年 齊藤由高
かき氷は、もちろん甘いがそのあたりに着目した句は少ない。「ヒヤッとあまく
て」が、かき氷屋さんのキャッチコピーのようで、本当に冷たくておいしそう!
そして、この句の一番すごいところは、「ゆうひいろ」と把握したところ。
「ゆうひいろ」から、赤とかオレンジとかいろいろ想像され、それらの色と融合
しているようなきれいな景も広がってくる。                 
【入選】 夏の夜あわてんぼうの虫の声          清水小6年 大嶋立惺
暑さで寝苦しい夜、君は秋の季語である「虫の声」を聞き、まだ夏なのにあわて
んぼうだなと思ったんだね。「あわてんぼう」としたところに、小さな動物と心
を通わせているようなやさしさを感じる。

【入選】 試合後は光るあせとソーダ水         清水小6年 太場信之介
「あせ」と「ソーダ水」という二つの季語から、試合は夏に行われたものだと
想像される。そして、結果については述べられていないが、省略こそ俳句!
「光るあせとソーダ水」から達成感みたいなものがうかがえる。俳句は五七五、
季語はひとつなどという約束事よりも、先ずは感性を大切にしたい。それから
推敲して形をととのえればいい。  
                                     
【佳作】 夏の朝家族になったカブト虫          姫山小4年 池永 陽   
俳句は作者の手を離れれば読者の自由なので、この句には二つの解釈ができる
と思う。朝早く誰かと「カブト虫」を採りに行って君の家族になった、また、
君んちのカブト虫に赤ちゃんが生まれ新しい家族が増えた、どちらが事実かは
わからないが、こうして想像を広げていくことができるのも十七音という俳句
の短さ故の楽しさである。要するに、この句のテーマは、「生き物はみんな家
族」。そう考えるとこの世の中から争いごとは無くなるよね。                        
【佳作】かきごおりおなかにゆきがふってくる   湯築小1年 丸山 翼
  夏といえば「かきごおり」の句が圧倒的で、「頭がキーンとして痛い」などとい
うのがほとんどであるが、「おなかにゆきがふってくる」という把握はすごいね!
この句からは、かき氷を食べることで暑さが引いたということだけでなく、雪がお
なかに降ってくることで、内面までも真っ白に新生したような感じも伝わってくる。
この感性大切にして!

本郷和子・選
【特選】 ハンカチにホタルを入れたらランプだよ   清水小3年  石井彩貴
  ハンカチにそっとホタルをいれて包むようにすると、点滅する蛍の灯りみえて
  美しいと思う。それをランプのようだと見立てた作者の発見がすばらしい。
【入選】 貝がらを耳にあてれば海の音           姫山小4年   中本稀璃 
   浜で拾った貝がらを耳に当ててみると、きっと、波の音が聞こえてきたのだろう。
   少女が浜辺で貝がらを耳にして静かに海の音を聞いている姿が目に浮かぶ。  
【入選】 せん風機まわれば私もまわりだす         湯築小6年  加藤愛佳
   まわればまわりだすという繰り返しがおもしろい。リズム感がある。
扇風機がまわるのを見ていて、自分の気持ちも一緒にまわっているのだろう。
【佳作】 すいかわりみんなのこえでまっぷたつ     清水小1年  宮崎光希
   目かくしをされていて周りの皆が「右」「もっと右」とか「もう少し前」
  「がんばれ」とか教えてくれているのだ。その声のおかげで西瓜はみごとに
まっぷたつの割れた。俳句になっておみごと。
【佳作】  物語続きはお風呂で夏の夜           姫山小6年  葛西真生
   日本の昔語かそれとも外国のすてきなお姫さまの物語か句を読む人に想像をさせる
   表現が上手。お風呂は楽しい時間になるだろう。
 
     
熊野伸二・選

【特選】 およぎましょうおおなみこなみなつのうみ  湯築小1年 アブダン 
 アブダンくんの誘いかけに思わず泳ぎたくなりました。“おおなみこなみ”のリズムに
のって。  
                                 
【入選】 なつふくきすずしくいきいきしょうがっこう  湯築小1年 生田百世
 夏をのりきるための心構えができていますね。すずしそうで、かわいい。
                                         【入選】 せみたちがいちばんめざしないている   湯築小1年 山本佑紀
 朝から蝉の声は、やかましいですね。やかましいと思わず、一番をめざしている
とせみたちを応援しているあなたの純な気持ちは美しい。
                                           佳作】 あじさいはいろんな色でげいじゅつか   姫山小3年 有本陽愛花
 あじさいは「七変化」するそうです。そんなあじさいを芸術家とよんだあなたに、
 あじさいへのおもいやりを感じました。あなたも芸術家です。

【佳作】 かきごおりたべたらあたまかちんこちん   清水小2年  大西美空   
  “かちんこちん”と音が聞こえてきます。あつい時は、かきごおおりをたべて、
  夏をのりきってください。

まつやま山頭火倶楽部いいで賞

 アジサイが雨のシャワーでうすげしょう      清水小4年  篠原 元
  なんと、作者は4年生の少年。紫陽花の薄化粧という言葉をよく思いついたも
のだ。雨が降れば紫陽花は一段と美しく見えたのでしょう。