今週の山頭火句

今週の山頭火句 朝湯こんこんあふるるまんなかのわたくし 山頭火

2022年9月24日土曜日

「第34回俳句ポスト賞」の発表!

       <<第34回山頭火俳句ポスト賞>>

                   

                   

(投句期間 令和4年3月1日~令和4年8月31日) 
                                              
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、299句。
(県外の投句は、174句(函館市、仙台市、横浜市、藤沢市、郡上市、半田市、大阪
市、富士吉田市、山口市、柳井市、光市)でした。

 表彰式は、10月9日(日)13:00~13:30
 山頭火一草忌の後、一草庵広場で実施。


                 

      
山頭火俳句ポスト大賞
月をみる争いもみる地球人       松山市 太田辰砂
 評】月と言えば秋の月である。地球に住む人間はだれもが秋の美しい月を見る。
しかし、地球上では争いが絶えない。その争いも人間は見ているのだ。美しい月も争いも
地球人の我々は同時に見ている現在、ロシアとウクライナの戦争に悲しい思いをしている
全人類を月はただ美しく照らしている。(本郷)
                                                                                              
山頭火一浴一杯賞
 梛の葉娘と拾う一草庵            柳井市 廣中 淳       
【評】梛には雌雄とあって花は夏に咲き淡黄色、そして球形の種子を結ぶ。
つやつやとした葉は鏡台の引き出しや、お守り袋に入れておくと幸せになれる
という。一草庵日記にも“梛の葉”とある。なぎは和ぎ凪で、
おだやかさを意味する。(髙橋)

 
山頭火柿しぐれ賞
火の音を聞きに来た             松山市 菅野 秀
【評】一般に花火は見に行くもの。夜空に開く大輪の花火の色や光を楽しむものである。
つまりは視覚の楽しみなのだが、言われてみれば、もし花火に音がなければ、
魅力は半減するだろう。もちろん、視覚も楽しませるのだろうが、
それを大胆に聴覚に絞った表現に意表を突かれる。(小西)

小西昭夫選
【特選】防空壕残る生家やヒロシマ忌        松山市 浅海好美
【評】ロシアによる核兵器の使用が云々される時代では、余計に「ヒロシマ」は重い。
生家に残る防空壕は「ヒロシマ」「ナガサキ」に限らず、戦争の悲惨さに思いを至らせ
平和への希求を新たにしてくれる。
【入選】太平洋平のあたりに鯵を釣る        松山市 河野美子
【評】太平洋が枕詞のように使われていて面白い。「太平洋」の文字のまん中に「平」
の字があり、別に太平洋でなくても平らな海、穏やかな海で鯵を釣ると読んだのでいい
だろう。このゆとり、遊び心が何とも愉快である。
白石司子選
【特選】おちついて死ねそうもない猪来たる  西予市 宇都宮諦愚
【評】山頭火が一草庵入庵の日に、朱鱗洞の最後の句「いち早く枯るる草なれば実を
結ぶ」に呼応するように詠んだ、「落ち着いて死ねさうな草枯るる」の本歌取り。
農業をされている方などには、「猪来たる」は、「実を結ぶ」どころではなく、
まさに死活問題であり、単なる「もじり」の句で終わっていないところがすごい。
   
【入選】春昼や致睡量ああパン二つ       京都市 伊東沙也加
【評】物事を調べるには様々な情報が氾濫しているインターネットよりも、やは
り辞書が一番確実だと思って「人生の意味」を調べようとしたのであるが、
やめてしまったのかもしれない。生きる意味の答えは本当に難しい。無季句で
あるが多くを語っているし、「引こうとした」という口語が一句を深刻なもの
にしていない。
本郷和子選 
【特選】鬼の子の蓑より覗く小宇宙       松山市 西野周次
【評】蓑虫は鬼の子とも言って、木の葉をつづり合わせて蓑のような巣を作り
その中に棲む。この中で羽化して蛾になるものと、雌には脚がなく羽化せず一生
蓑の中にいる。鬼は蓑笠を着ているという伝承から鬼の子、鬼の捨子とも言われる。
時に鬼の子は蓑の外を覗くが鬼の子にとってそれは小宇宙である。
上五「蓑虫」とせず「鬼の子」とすることで俳諧味が出た。

【入選】廃校のカフェは満席かき氷      松山市 古沢登美子
【評】過疎になった田舎の小中学校が閉校になった話は毎年のように伝えられる。
その廃校にカフェがオープンし住民が多く、ランチやお茶を楽しみ来る。
この暑かった夏は、かき氷を求めて満席になったという。廃校というマイナス面と、
満席というプラス面を取り合わせたところが巧みである。
   
髙橋正治選 
【特選】姫蛍忘れられた記憶を光らせる     松山市  西園寺明治
【評】日が暮れて、やがて夢のような青い蛍の光が闇に流れる。青い光は歌麿の刷った浮世絵の女人の眉のような弓なりの線を描く。幻の恋、悲恋でもないか。
【入選】狭い庭ゴーヤひまわり夏爛漫     松山市 曽根ともみ
【評】ひまわり程、太陽を憧れるものはないだろう。その真実の花は陽に向いて廻る。ゴーヤはつるをのばし蔭をつくって風を呼んでくれる。四季を通じて感じられるものに視覚がある。土の心はその人のこころ、夏は触覚、秋は味覚を。

まつやま山頭火倶楽部賞 
山のぼりサワサワーッとはるのかぜ       松山市 森 心晴
【評】作者は7才だった。一草庵に来て御幸山に登ったのでしょうか.
“山のぼり”の上五で切れて、“サワサワーッ”というオノマトぺ(擬音語)で新鮮なさわやかな彼女の心が、作意なく表現されています。季節は違うけれども、子規の「六月を綺麗な風の吹くことよ」の一句がサワーッと頭に浮かびました。