(投句期間 令和4年9月1日~令和5年2月28日)
一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、177句。
(県外の投句は、38句(札幌市、恵庭市、つくば市、松戸市、横浜市、宇都宮市、
厚木市、大垣市、浜松市、滋賀県蒲生郡)でした。
表彰式は、4月29日(土・祝)13:00~13:30
公開俳句大会「俳句一草庵」会場で実施。
山頭火俳句ポスト大賞
訪ね来て柿たわわなり一草庵 宇和町 玉井 澄
【評】柿の木は高さ約10メートルに達する。一草庵の柿の木もそれに近い。
昭和十四年十二月入居、山頭火が来松して「十六夜柿の会」を結成主宰した自由律俳句
結社であり、柿の会とは一草庵に当時も柿の木があって師走の柿から名づけた。
訪ね来て柿色の柿がたわわに迎えてくれた抒情は、かぎりなく心を誘惑する。(髙橋)
腹が減った道後へ行こう 松山市 山椒魚
【評】空腹を満たすのになぜ「道後へ行く」のだろう。答えは簡単。
道後温泉に浸かるのである。まず空腹を満たすのだろうか。
入浴が先だろうか。それはともかく、一浴のあとは一杯である。(小西)
冬の月句碑ぽつゝと語りだす 松山市 太田辰砂
【評】冴え冴えとした月が真上を高く渡る夜、作者は句碑と対峙した、
いや、嘗て目にした句碑を思ったのかもしれない。研ぎ澄まされたように輝く月に
対応するように、後世に業績を伝えるための句碑がぽつぽつと語り始めるのである。(白石)
【特選】半島の先の先まで島蜜柑 松山市 中村とみ子
【評】耕して天に至る段々畑のことはよく詠まれる。それが垂直のベクトルであるとすれば、この句は水平のベクトル。
島の半島の先の先まで蜜柑が植えられているのだ。人間はすごい。
【入選】ちゃんちゃんこ羽織れば戻る妣の子に 松山市 関谷昌子
【評】子供のころは、防寒のために母が着せてくれたちゃんちゃんこ。
いまでは着る人は少なくなったが、愛用しているのだろう。ちゃんちゃんこを着る度に、若かった母や幼かった自分がよみがえるのである。
白石司子選
【特選】凩や大きな笠と鉄鉢と 松山市 矢野閲子
【評】草庵にある山頭火の「大きな笠」と「鉄鉢」とを単に羅列しただけのような句であるが、季語「凩」がその生涯を暗示。たったの十七音で小説に匹敵するような内容をも盛り込めるという見本のような句である。
【入選】かくし玉どんぐり一つ鏡台に 松山市 今岡美喜子
【評】子どもの頃、木の実を宝物のように箱などに保存していた記憶があるが、
たかが、いや、されど「どんぐり一つ」なのである。何かがあった時の「かくし玉」と
して、すぐに取り出せるように日常的に使う「鏡台」にこっそりと備えているのである。
本郷和子選
【特選】老木に力みなぎる緑の芽 松山市 桝谷明美
【評】何十年も、いや何百年以上も生きている老木であり、春になれば必ず若緑に芽吹
いてくるのだ。樹の生命力を「力みなぎる」と表現した。
これは、人間にも言えること。たとえ肉体は老化しても。その精神と生きる力はまだ
まだみなぎっているのである。読む者にとって、一句からの力をもらった感がある。
【入選】初御神籤訓戒胸に固結び 浜松市 力武由起子
【評】御神籤にはなんと書いてあったのだろう。恐らく訓戒であるから、さとし、
いましめる言葉があったにちがいない。作者は、その言葉をしかと胸に受け止め、
おみくじを、近くの木の枝に固く結んだのである。大変、素直で真面目な性格の作者と
思われる。この一年、きっと幸せであるはずだ。
髙橋正治選
【特選】川を歩いてひとりじゃない 横浜市 相原光樹
【評】その流れには小魚が無心に泳いでいる。明るい太陽、うまい空気、美しい水、生かされているのだ。とかく独りでいると雑念に埋もれて淋しくなる、感情の浪費に疲れる自分で自分に語ることで寂しい救いを得る。けれどひとりじゃない肩の力を抜いて胸をはって歩け。
【入選】山茶花咲いて早や一年 松山市 富海美枝
※ 画面への貼り付けが、上手くできませんでした。