一草庵での竹中直人さん |
これは、NHK松山放送局の「しこく8」の番組紹介文です。
放送時間は、11月2日(金)20:00~20:45。
今回の山頭火役、そして案内人は、竹中直人さんです。
一草庵で、撮影現場を拝見することができました。
鼻歌交じりの竹中さん、気楽に写真を撮らせてくれました。
ざっくばらんな人です、少しお話することができました。
映画「無能の人」と「三文役者」の話をしました。
つげ義春の「無能の人」の最後の”蒸発”に登場する井上井月(いのうえ・せいげつ)の話を。
”芥川龍之介に見出され、山頭火に慕われ、つげ義春が漫画に描いた乞食俳人井月のことです。
竹中さん、すっかり忘れていたようでしたが、もう一度読んでみようと、すぐさま手渡した漫画本を読みはじめました。殿山泰二さんを描いた映画「三文役者」、私の好きな映画だったので、そのお話もしました。
つげ義春・漫画「無能の人」 |
一草庵で「無能の人」を読む竹下直人さん |
<初監督・主演の『無能の人』は、第48回ヴェネチア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。ブルーリボン賞主演俳優賞を受賞
映画『シコふんじゃった』、『Shall we ダンス?』では、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。初対面は、NHK大河ドラマ『秀吉』でした。>
映画『シコふんじゃった』、『Shall we ダンス?』では、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。初対面は、NHK大河ドラマ『秀吉』でした。>
「無能の人」の巻末に、つげさんの「乞食論」が載っていました。
その中に、「身心脱落(しんじんだつらく)」の言葉がでてきます。
「道元」を読んだとき「身心脱落」という言葉がありまして、あ、と思ったんです。
道元のいう悟りの状態とはこういうことなのかと…・
スポーツやって無我になるなんて程度のもんじゃないんですよ。…
道元にいわせれば、無になれば、自が消えれば、必然的に他も消える。…自が消滅すれば対立関係もなくなる。したがって天地と一体になるというんだけれど…。したがって、現在は不安のかたまりだけど、自由自在というか、何もわずらうことも不安もないですね。…
さて、”濁れる水の流れつつ澄む”どんな放送になるのでしょうか。
竹中直人の山頭火、四国のどこを旅したのでしょう。観音寺有明浜、徳島日和佐・室戸岬、高知仁淀川町でも撮影をされたらしいです。
次のような話を、竹中さんとお話しました。私の一方的な話でしたが…。
山頭火をどのように思いますか。
迷いながら、何かを求める
純粋で、素直な人だと思うとのこと。
一草庵の板に張り付けられた山頭火の写真 |
そして、来年計画されているの映画「山頭火」(中山節夫監督)の話をすると、即座に是非やってみたいとの返事が、かえってきました。
行く川のながれは絶えずして、しかも本(もと)の水にあらず…。
この鴨長明の『方丈記』を、見事に!一句にしたためたのが、人生の終着駅・松山に辿り着いた山頭火のこの句
濁れる水の流れつつ澄む
ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
軽くうたっているところがいいですね。(この句は、山頭火が昭和15年9月8日詠む)
鴨長明は、後白河が天皇だった頃に生まれ、死んだのは後鳥羽院の時代。
平清盛は貴族の社会を巻き取り、「武家の社会」をつくります。しかしあっという間に、平家も滅亡し、そして源氏も滅亡してしまうのです。
長明は隠遁し、58歳のときに『方丈記』を綴ります。
山頭火は、57歳の時、この「濁れる水」の句をつくります。
さて、山頭火の生きた時代、
昭和12年には、日中戦争がはじまり、昭和16年12月8日に、我が国は真珠湾を攻撃するのです。そして悲惨な世界戦争が始まります。
そして今まさに、閉塞感のある、世界中が未来に期待のもてない時代を迎えています。
一草庵の縁側で、俳句を推敲する |
「濁れる水の流れつつ澄む」の句碑を見つめる |
その無常観は、弱き者たちへの温かいメッセージなのでしょうか…。
(Yさんに、全国放送してくださいと、頼んでおきました。)
忘れていました、栃木の黒澤さんがこのテレビに出るらしいです。
逆打ち遍路しています、今一草庵にいますと、電話をいただいたのですが、
残念ながら、お会いすることができませんでした。
NHKさんに、取材を受けたそうです。
黒澤さんのことは、「一草庵だより11号」に紹介させていただきました。
歩き遍路7年の記録「遍路つれづれ、山頭火を訪ねて」をしたためて、その本を一草庵に送ってくれた人です。きっと素敵な女性でしょう。