「山頭火俳句ポスト賞」の発表は、三津で! |
『第9回山頭火俳句ポスト賞』決定発表します。
(投句期間 24年7月1日~24年10月31日) 一草庵「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は143句。(内、県外句の数は55句、今回は台湾の人からの投句が12句ありました。)
東京杉並区・西東京市・八王子市、神奈川県海老名市、広島県広島市・呉市・福山市山口県山口市・下関市、名古屋、兵庫宝塚市・伊丹市、高知など全国各地からの投句より、各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。
表彰式は、11月23日(祝)の俳句一草庵三津吟行句会の会場で行いました。
山頭火俳句ポスト賞
鬼柚子の類い稀なる面構え 松山市 林弘子
(評)鬼柚子を初めて見た人はだれでも驚く。
その柚子を「面構え」としたユーモア。
それも「類い稀なる」と評した。鬼柚子の堂々たる形、色合いを句にするなど
とても至難の技と思っていた。
切れ味の良い句とは、このような句をいうのだろう。
スパッと言ってのけた作者に脱帽。(本郷評)
小西昭夫・選
【特選】鬼柚子の類い稀なる面構え 松山市 林弘子
(評)おかしい。鬼柚子は中国が原産の文旦の仲間である。
直径二十センチ、重さ1キロほどの黄色い果実になる。
その果実の表面の凸凹が凄まじく鬼柚子の名が付いたことに納得するが、
まさに「類い稀なる面構」である。言い得て妙である。
【入選】荷を解けば手紙にそえてどんぐりも 松山市 谷本君子
(評)故郷かあるいは仲のよい田舎暮らしの友人から小包が届いたのであろう。
小包には秋の山野の恵みが詰っている。添えられた手紙には、
どんぐりも入っている。その心遣いがうれしい。
秋晴れのような気持ちのいい句である。
白石司子・選
【特選】秋雨や心の中の落し物 台湾高雄市義守大学 林子涵(19歳)
(評)古くからもの寂しいものとして詠まれてきた「秋雨」。
そんな冷たい雨が降る中で、作者は自身と対峙し、これまでの人生の中で、
うっかり気づかずに失ってきたさまざまなもの、つまり「心の中の落し物」に
思いを馳せたのである。
上五「や」で切れを明確にすることによって、季語の持つ本意・本情をうまく活用。
一句全体からは、もの悲しさ・もの寂しさが漂う。
【入選】逡巡にだんまり決めし羽抜鳥 松山市 西野周次
(評)決断がつかない時、一体どうすればいいだろう。
もしかしたら、多くを語るよりも無言でいる方が一番いいのかもしれない。
そういうようにただ、「だんまりを決める」ほかのない「逡巡」であるが、
「人間」ではなく、「羽抜鳥」を配したことがちょっぴり滑稽。
まさに「おもうしろうてやがてかなしき」世界である。
本郷和子・選
【特選】一草忌二十人前の饂飩打つ 松山市 浅海好美
(評)山頭火が当時松山で親交のあった人々、数えてみれば二十人ぐらいになろうか、
うどんの好きであった山頭火を思い、そしてその友人たちを思いつつ、
うどんを打ったのであろう。優しい気持ちが表現され、出来たうどんは現在、
作者の周辺にいる二十人の方々が召し上がったのであろうか。
二十人が効いている。
【入選】秋雨や心の中の落し物 台湾高雄市 林子涵(19歳)
(評)心の中の落し物は一体何だろうか。
多分、何か割り切れないもの、胸の内に溜まっているもの、
言いたくても言えないもの。
それとも遠い昔のなにかが心の中に潜んでいるのかも知れない。
季語の「秋雨」が、作者の心情にぴったりと合い静かな余韻を醸し出している。
熊野伸二・選
【特選】今日を越え明日をも超えて母の胸 西東京市 北谷隆策
(評)「今日」は、喜怒哀楽と雑事にまみれた現実。「明日」は有るや否や、
あるいは幸か不幸か、不確実な未来である。そんな「今日と明日」を超越して、
すべてを託せるのが母の胸だ。無季句だが、今日を捨身懸命の句作に生き、
あてどない明日へ歩き続けて、最後に母の胸へ帰って行った山頭火を映している。
【入選】身の丈に合った暮らしや大根煮る 松山市 米山千秋
(評)人はとかく、外に対して自ら実体以上に飾りたてて見せたがる。
「虚勢」を張るのだ。心より金が幅を利かせ始めて、その傾向が強まった。
作者は虚飾を拝した暮らしをモットーとして、庶民生活の日常に登場する「大根を煮る」
行為をもって、身の丈に合った暮らしと納得している。
一草庵・夏の子どもまつり俳句特別賞
夏まつりでの投句38句より、優秀句を選びました。(熊野選)
【特選】 かき氷ぼくの脳天つきぬける 桑原小1年 瀬戸裕隆
【入選】 はぎの花葉っぱが丸くてかわいいな 湯築小3年 越智朱音
【入選】 山頭火母を思ってたびをする 湯築小6年 西岡祐斗
<コメント>
本年9月、一草庵でのフランス俳人との俳句交流で、
山頭火の俳句が、世界に通じる俳句、俳人だなぁーと強く実感したものです。
前回第8回の山頭火俳句ポスト賞は、カナダの人の俳句が山頭火俳句ポスト賞
選ばれましたが、今回は、台湾の大学生、林子涵君の句が選ばれています。
台北には、松山(しょうざん)空港があり、愛媛の松山には、松山空港があり、
「松山」という同じ名前の縁で、直行便が飛ぶというニュースを聞いたことを思い出したが
どのようになったのだろうか。
台湾と俳句交流ができたらなぁーと思ったりした。